第2話 1


次の日

使用人の朝は、早い。



「ぅるるぁ!

ちんくしゃ、朝だぞぉお!」



人を睨む事に慣れてないのか、白目を剥きながらプロトの過ごしている部屋の襖をバルは開く。



スパーンと音を響かせて開いた襖を開けると、布団が畳まれて綺麗な状態の部屋がそこにはあった。


あれ?

そう首を傾げるバル。



大体、自分が起きる時間帯は早い。

主人のスーはともかく、同僚のコルノと日課の屋敷内見回りに出た頃だとプロトは見ていなかった。



「喧しいぞ、ゴリラ。

朝から元気なこった。」



バッと勢いよく声がする方を見たバルの視線には、空の洗濯籠を肩に掛けるように持ったプロトの姿があった。


先ほどの声が聞こえたのだろう。

眉間に皺を寄せて空いている手で片耳を塞いでいる。



「日課の洗濯は、さっき終わったぞ。

他に何かよーか?」


空になった洗濯籠をポイっと自室に投げ込むと、ポリポリと頭を掻きながらバルを見た。



プルプルと悔しそうに震えるバルの肩を笑いを堪えるような感じでプルプルと体を震わすコルノが優しく叩く。



「朝から面白いコントをありがとう2人とも。


そんなに元気なら出来立ての朝ごはんもさぞ美味しいだろうね。

ほら、姫が待っている…行こうか?」




まるであやすような声色で話をした後に優しくバルの手をコルノは引っ張った。



色々と上手なコルノの対応に内心舌打ちをしながら、プロトは後をついていく。



「おや、プロト君…君は朝が早い人かな?


誰も起きてない時に起きてたよね。

まさか…昨日のオイラの活躍に興奮して眠れ…。」


「はん、自信過剰もそこまでいくと清々しいな。

おら、出るとこ出てからその言葉を口にしてみろや。」



両手を頬に当ててキャーっとクネクネしているスーに対して、かなり軽蔑するような感じでプロトは彼女を見下ろしていた。

少なくとも上司に向けていい視線ではない。



スーは、胸とお尻に手を触れた後にスンッ…とした表情に変わり下を向いた。



「貴様ぁぁ!

慎ましさがお嬢様の魅力なんだよおぉ!」



ガルルルと唸るバル。


オイオイ、フォローしろよ。

お子様ボディーと言ったのは自分だが、それでもバルの一言には流石に苦笑いを浮かべた。



「はっはっは。

姫は、まだまだ成長期なんだこれからだよ。


それはそれとして…そんな的確に言えるほど姫の容姿を凝視してる君は、中々の変態さんなんだね。

流石だ。」



コルノは、スーの頭を優しく撫でた後に少し影の帯びた笑顔をプロトに向けて話を続けた。


思わぬ反撃にギョッとしたプロトだったが、すぐに口を開く。



「ロリコンやペドじゃねーんだ、誰がこんな小娘に。」


「自己紹介ありがとう。

そうでもなきゃ、そんな言葉は出てこないだろう。


それとも君は、思春期に入ったばかりの女性の扱いになれないお子様なのかな?

気になる相手には、もっと紳士的に向きあい言葉を選ばなきゃ。


君が立派な男なら…言われなくても分かっている筈なんだがね。」



表情は笑っているが…目は、笑っていない。

ジロリとプロトに向けられる視線がやけに冷たい。


ググググと唸るプロトを見て満足したのか、コルノは、息を深く吐き出して両手をパンパンと叩く。




「さて、積もるもあるとは思うがご飯が冷めてしまう。

頂こうか?」



コルノはそう言いながら、皆に食事を促した。

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