第1話 6
「へー、結構うめぇじゃねーか。」
「素直な言い方じゃないなぁ、プロトくぅん。」
プロトの言い方に気持ち悪い含んだ様な言い方で返答するスー。
下手な酔っ払いより面倒臭い。
このお茶にアルコールでも入っているのか疑ったが…香りを嗅ぎ分けてみたがアルコールが入っている気配はなかった。
だとしたら…団子を食べるのは、そうとう久しぶりだったのか?
そしたら、多めに見てやるか。
ウザ絡みするスーの話を大きく聞き流してプロトは団子を頬ばる。
すると、団子屋がイソイソと店じまいを始めていた。
この戦に時計や時間などの概念はないが…日が暮れ始める頃に閉店するのが一般的だろう。
違和感に気がついたのはプロトだけではなく、スーも気がついたようで店員の元に向かっていく。
「ねぇ、おねーちゃん前に来たときはもっと日が沈んでから店じまいをしてたけど…何かあったの?」
「ぁあ、お嬢さんは知らないのね。
最近…出るのよ猛獣が。」
猛獣?
そんなものがいたのであれば、コルノがとっくに駆除してるはず…。
不思議そうに首を傾げるスーを案じたのか、店員はしゃがんでスーに視線を合わた後に、まずは猛獣とは何かとスーに教えた後に、時間についての説明を始めた。
畑を荒らす猿のような顔をした虎やクマのような動物で、決まって夜に現れる。
畑とかの被害はあるが…今のところは村人には被害はない。
猟師会や侍達に討伐を依頼したが…どれも返り討ちにあい、今もまだ野放し。
今は、効果のある罠や猛獣の嫌がる匂いなど村の外れに毎日模索しながら設置してきるようだ。
「だから、お嬢ちゃんのように小さな子は早くお家に帰りなさい。
帰る場所が遠いなら私の家に泊めてあげるから。」
「ふーん…まぁ、大丈夫だよねーちゃん。
オイラの護衛のヤンキーは腕は確かだから猛獣の一匹や二匹位サラサラーっと撃退したくれるよ。」
スーの一言に娘はチラリとプロトを見るが…目つきの悪い丸腰の荒くれ者にしか見えない。
その風貌を誰が見ても、侍や猟師のように撃退できるとは到底思えなかった。
「おい、小娘さっさと帰るぞ。
猛獣退治で困るくらいこのご時世どこにでもある。」
「うーん、そうだね…対策しないでやって大怪我しても困るしね。」
そんな事を話している2人の後ろにズンッと何かが落ちる音が響く。
怯える娘は口をパクパクとさせながらプロト達の後ろを震える指でゆっくりと指す。
2人がゆっくりと後ろを見るとそこには、猿の顔をした虎の体を持つ大きな獣がいた。
警戒しているようで、獣の間合いから少し離れた場所に降りていてプロト達が振り向くと大きな声で威嚇を始める。
あまりの大きな咆哮に空気は揺れ、娘は辛そうに両耳を手で塞ぐ。
…がプロトに直ぐに止められる。
「やかましい。」
直ぐに獣の間合いに入り、脳天めがけて拳を振り下ろした。
拳が命中した獣の頭は見事に地面にめり込んでいく。
ピタリと止んだ声に戸惑いを隠せない娘に視線を送りながら地面にめり込む猛獣を指差す。
「これがてめぇーの言ってた猛獣なんだな?
始末してもかまわねぇーよな?」
コクコクと早く頷く娘の姿を確認するとクルリと娘とスーに背を向けて歪んだ笑みを猛獣に向ける。
猛獣もそれで絶命したり気絶した訳でもないようで、めり込む頭を力一杯引き抜いていた。
「プロト君や、ここよ猛獣はほっとくんじゃないのかい?」
「ぁあん、寝ぼけた事を言ってんじゃねーよ。
コイツは俺に牙を向けたんだんだ、始末するには十分な理由だ。
おらエテ公、雑魚ばかりじゃ退屈だっただろ?
今度は俺が相手してやるよ!」
プロトは、右手に力を込めて猛獣の顔面を目掛けて腕を真っ直ぐ伸ばす。
拳が顔にめり込み後ろに吹き飛ばされて猛獣はやっと理解したようだ、プロトが今までの人間とは違うと。
熊のように立ち上がり爪を立ててプロトに殺気を送っていた。
プロトは、やる気満々の猛獣に対して嬉しい気持ちもあれば、面倒臭い気持ちもある。
倒せない事はないが…丸腰だと時間がかかって疲れるからだ。
こんな事なら、コルノに刃物の一つぐらい貰っておけば良かった。
そんな後悔をため息と一緒に吐き出した後に猛獣に向かって右掌を向ける。
“ブリッツ”
バリッと静電気が破裂する音を響かせると同時にプロトの前方が光る。
ドンと雷が落ちたような重たい音を響かせると猛獣のいた所が炭になっていた。
そこには丸焦げで丸くなっている猛獣の姿があった。
案外あっさり終わったな。
驚く娘を他所にそんな事を考えていたら、同じような猛獣があと4匹が丸焦げになった猛獣を囲むように現れた。
「ったく…おかわりかよ。」
そうぼやきながらプロトは猛獣達の様子を観察する。
先程の猛獣と同じ種類のようだが…1番前にいる1匹は、他の個体より一回り体が大きく身体中は傷まみれで背中や腕に刀が何番も刺さっていた。
おそらくコイツが群れの長で、駆除をしようとした人間を返り討ちにしたやつだろう。
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