第13話 家族クラン設立、その名も――

「―――え? なんだって?」


おめでとう、と両親と妹に祝われた俺は三人が口にした言葉に思わずそう返した。


「だから~!! 私と!」

「俺と!!」

「私で!!」

「「「クランを作ろう」」」

「――――え? クラン?」


この世界には『冒険者ギルド』『冒険者クラン』と呼ばれる団体がある、といっても冒険者ギルドとは総勢1万人以上から結成された組織の事を言い、冒険者クランとは1万人以下の団体の事を指す。

そして、それ以外ものは”野良冒険者”というらしい。


「と言うか待ってくれ! 優香はともかくとして…親父と母さんもまさか!?」

「あぁ、ギルドはきっぱり辞めて来た」

「えぇ。 私も辞めて来たわ! ぶい!!」

「お、おい…なんでそこまでしなくても」


俺は三人に向かってそう告げるが、未だ真剣な表情をする皆からは揺るぎなき意志を感じる。


「私さ…色々考えたんだ。 お兄ちゃんが居なくなって、お父さんとお母さんが毎日あのダンジョンに入ろうと必死になってる姿を見てさ? やっぱりお兄ちゃんが私とお父さんとお母さんを繋いでた鎖みたいなもんだったんだなって…」

「優香…」

「違うわ優香。 私達が…私達が創輔を縛り付けたのよ…何もしなくていいなんて言葉で先延ばしにして」

「そうだ。 俺らには当たり前な事でも…それがそれが創輔には辛い事だったんだ」


………何も言葉が出そうにない。 違うんだ、何もかもスキルが無いからだってくすぶってた俺のせいなんだ…


「だから決めた! 私は全部捨てて! お兄ちゃんとお父さんとお母さん! 4人のクランを作ろう!」

「ふふふ、経理は任せて! これでも若いころは受付嬢でそれなりにバリバリだったのよ!」

「じゃ、父さんは”各所”に挨拶回りをしてこよう。 素材買取の店や諸々用意しないとな!」

「み、皆…」


思わず熱い何かが込み上げてきそうになって来た。

や、やばい泣きそう―――


「ってのもあるけど、お兄ちゃんといたほうが今より数倍稼げそうだし」

「「うんうん」」


前言撤回。 さっきまで泣きそうになってた俺の心を返してくれ。


「おい!! さっきまでのムードを返せ!! お前ら!!」


だが、俺はそんな三人に感謝している。

今頃一人で路頭に迷っていたに違いない…だからこそ俺は俺の居場所を守る為に戦える。


―――――――――――――――――――――――


それから一週間と少しの事である。

どれだけ事前に用意していたのかは知らないが、元居た家を売り払い…以前よりも大きくなった三階建ての一軒屋に移り住んだ俺達は準備を始めた。


「さてと! クラン”スチールハート”! 結成おめでとう!!」

「いぇ~い!!」

「パチパチパチ!!」

「い、いぇ~い…」


とは言え、ただの家族四人でのパーティーである。

そしてさらに驚くべきことは”クラン名”まで勝手に妹に申請さていた事である。

更にさらに…以前にも増して来客が増えたような気がする。


「では! 明日からのお兄ちゃんの初ダンジョン攻略に祝しまして!! こちら!! 私のプレゼントをどうぞ~!! ど~ん!」

「「おぉ~!!」」


と急に立ち上がった優香は俺の隣に巨大な鋼の箱を置いた。


「え? なんだこれ?」

「手に入れるの苦労したんだから! 軍事用アイテムBOX!!!」

「ぐ、軍事用…アイテムBOX? いや、優香のそれ…」


俺は優香の持つ四角い小さな箱の様なものを指さす、結構なお値段がするという噂のアイテムBOXを見れた事にも驚きだが…軍事用アイテムBOX? なんだそれ!?


「お、おい…こ、これ…おま…た、高いってもんじゃなかったろう!?」


親父は声を荒げ優香に詰め寄る、表情から察するにもしかしてこれってとんでもなく高い物なのか!?

そういう事に詳しそうな母さんなら何かしっているかもしれない。


「そうね。 5千万円くらいかしら?」

「…ご、ごせん…ま…ん!?」

「うん、それくらい!! だって魔力10以下じゃアイテムBOXも使えないし! それにお兄さんちゃん単独でダンジョンに侵入するんだよ? 生半可な容量のアイテムBOXじゃダメダメ!!」


待て待て待て!! アイテムBOXが市場価格でいうと百万円程度、となると…ご、五十倍!?


「それにさ~これ滅茶苦茶不人気で本来は億超えてるらしいんだけど! 特別に譲ってもらったんだ~! 本来は軍用車とかに搭載する物らしいんだけど…なんと…それをここに!!」

「で? 優香? 父さんはおもったんだが、それ…どうやって持っていくんだ?」

「そ、そうね…おそらく相当重いんでしょう? それをどうするの?」

「え…そりゃあ。 こ、これだよ! これ!!」


妹は必至な表情で俺達に何か漫画のページを開き見せて来た。

え~っとこれは…何かのロボット漫画のページだろうか? そこには確かにランドセルの様に背中にマウントされた四角い箱が写っていた。


「いや、しかし…おまえ…これ。 そこの接続部分が無いと意味ないんじゃ?」

「あ………」

「ど、どうするの…これ、優香?」

「え…もしかしてこのまま?」


沈黙である。

誰も口を開こうとしない、俺達はただただ…リビングに置かれた四角い鋼鉄の箱を眺める。


『では、無理やりくっ付けましょう』

「―――――へ?」 

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