A-2
『マニック・ディフェンサー』。
『決して他者に弱みは見せず、明るく振る舞い、自己防衛に専念する人種』の総称。
この、『
それ
それ
きっと、「
このモットーの浸透度、認知度も相俟って、余計に疑われまい。
なんて、お高く止まっていたから、
それらしい相手が、まさか実在し。
あまつさえ、直接対決を強いられようとは。
「転校生」
「ああ。
お前には、彼の学校案内を一任したい」
夏休みの始め。
校長室に呼ばれ、「何事か」と構え来てみたら。
蓋を開けてみれば、
正直、興醒めも
余談だが。
ここに来るまでの間、声なんて掛けられなかった。
っても、当然か。
今の
「
あいつ、1年だろ。
担任かクラス委員にでもぶん投げろよ」
「相変わらず、
普段のマドンナっ
第一、お前はもう、大学受験を完了しているだろう」
「そ。
残り数ヶ月の高校生活を満喫する
だから、邪魔するな。
「……お前、バイトすらしてないだろう。
お前のバンド活動は、私からの小遣いで賄い、成り立ってるだろう。
何よりお前、まだ若い上に、バリバリの健康体だろう」
「
高校生としての
「弁舌も健在か。
よくもまぁ、それも校長に、そこまでの口が叩けたものだ。
お前、放課後デートに行けるリア友なんぞ、
「出たよ独善狂。
しかも、若作りとか。
それとも、大穴でアレか。
その歳で、百合にでも目覚めたか。
メタモルフォーゼの縁側にでも触れたっての。
あれは薔薇だし、だとしたら益々、不気味だぞ。
そして
親睦深めるべく漫画で陥落させようったって、そうはいかな「もう
前のめりになり、私の方に手を向け、やや強引に話を切る祖父。
そのまま老眼鏡を直し、再び腰掛け、続ける。
「彼は、私の幼馴染の孫だ。
加えて、まだ若い身空で、中々どうして壮絶な人生を歩まされている。
幼少の時分に、ご両親が交通事故で他界。
しかも、お喋りに夢中になる彼を庇う形で、だ。
その
お
お前と同じで、高校生になっても、友達が
それどころか、お前と違って、学校や周囲に、形式ばかりに溶け込んですらいないとか。
意図的に、触れ合いを拒んでいるんだ」
「……え」
「そんな矢先に、事件に巻き込まれた。
お前も知っているだろう?
『
「……現実と夢の区別が
「そうだ。
今回の犯人は、彼の通っていた高校の出資者の
その自己顕示欲旺盛なボンボンにより加害、阻害された。
しまいには、保身で多忙な学校側に、その件を掻き消された」
「そんな……!
そんなの、横暴だっ!!
その男は、
バンッと力強くテーブルを叩く私を、祖父は再び制し。
憤りを抑え込みながら、静かに続けた。
「彼の祖父、私の幼馴染は、筋を通す男だからな。
その証拠として、警察に個人的に連絡し目下、暴力事件として捜査し、鉄槌も下った。
あの財閥には兼ねてより、硝煙の香りが付き纏っていた。
真実が明るみに出た以上、かの学校も、財閥も、
時代が変われど、文明が発達しようと、その点だけは変わらん。
変えてはならんのだ」
「……そうか。
良かった……」
胸を撫で下ろすと、祖父が意味深にニヤニヤしたので、カチンと来た。
テーブルさえ
「……
「いんや。
「今から捻くれてやろうか」
「
「私のダブスタ精度、期待に応える擬態の新人っ
が、流しておこう。
いつまでも、こんな息苦しい所に留まりたくないし。
家族間での
「で。
案内だけすれば
「引き受けてくれるのか?」
「断った所で、押し付けるんだろう。
自宅に無断で招待なんざされた暁には、七面倒だ。
渋々、承諾させられてあげるよ」
「助かる」
「はいはい」
「その調子で、彼と仲
そして、あわよくば恋仲に」
「そんなこったろうと思ったよ、このROM専」
筋金入りの老婆心だ。
はー……。
恋愛とか、真っ
「そんな調子だから、高校生にもなって、恋愛偏差値が『真っ
「着痩せしてるだけだ、バーロー。
てか、時代錯誤なセクハラ噛ますな、遺物。
身内の
「
あくまで見る専に徹しているぞ」
「
あと、気が変わった。
やっぱ、
「
私はいつでも、お前の本性を公開
「好感度と貢献度を高級度をリサーチしてから
こちらにおわす
学園不動の永久欠番センター、
畏れ多くも先の生徒会長、
の本体の、
今更その程度で、揺らがされて
「お前、甲◯業魔のなり損ねだろう。
そして、この学校の生徒、教師にではない。
お前の就職先に、リークするのだ」
「は……はぁぁぁぁぁっ!?
そしたら
『1年間、レコードを使い通し、他人に正体を露見しない
就職条件もクリアしただろ!!」
「
付け足せば、彼は1時間前行動を厳守するタイプらしい。
更に加えれば、ここに来るまでの電車は通常運転。
要件は、それだけだ。
分かったら、とっとと行け」
「このっ……!!
……この、ド腐れ老い惚れがぁぁぁぁぁっ!!
言っとくけど、全部そっち持ちだからなっ!!
デート代という名の必要経費は根こそぎ、利子付けて請求してやるからなぁ!!」
「ふん。
その程度のお布施など、造作も
私の軍資金が、火を吹くのみ」
「この、ファンク・ラブッ!!
孫娘の色恋沙汰なんぞに興味持つな、バーカ、バーカ!!」
誰でも
けど、誰かに評価、褒めて
それから数分で身嗜みを整え、
さも「余裕な女」っぽい態度で彼を待っていた
見るからに「数日前から聞いてた」感を演出しながら、スムーズに学校案内をした私を。
そんな背景と知ってか知らずか。
そうして出会った、
あのROM害の格好の餌食なのは
図らずも、惹かれてしまったのだ。
内気な彼に隠された、芯の強さ。
似て非なる彼の心奥に秘められた、言葉の正体に。
まぁ、
彼が見ているのは、替え玉の
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