7-4

各々おのおの方ぁ!!

 いざ、尋常にっ!!

 タギタケ、テンプラでござるですわぞぉ!!」

「セクタム〇ンプラみたいに言うな。

 ていうか、あんた楽しんでるでしょ、風凛かりん

 あと、なんでまた士雨しぐれ家の呪い発動してるのよ」

「『肉体のみならず免疫力まで、高校時代に戻した所為せい』。

 ……とか?」

本当ほんとうに、なにからなにまで意味不明ね。

 いつも通り」

「はーっはっはぁっ!!

 敵将、討ち取ったり〜っ!!」

「追伸。

 あんたのツレ、もっと楽しんでるわよ?

 出夢いずむ

「かっ……格好かっこい……。

 ですっ……」

「よし。

 うちの娘、妹、姉の真由羽まゆは釘付けにした、たぶらかした罰。

 あいつ、蹴り飛ばす」

「ち、ちがっ……。

 ち、治葉ちよの方が、格好かっこい……。

 ……です……」

「許した」

うちのヒーローが、ごめんなさい……。

 目的そっちのけで、勝手に戦い出して、ごめんなさい……」




「……」



 友花里ゆかりさんに従い、昇降口にて合流する俺達。

 


 そこで待ち受けていたのは、またしてもカオスな状況。

 先程の『ニアカノ同盟』に負けず劣らず、残念な、理解の及ばない光景だった。



 えと……どこからツッコめばいんだ?



 風紀委員の腕章付けながら、竹刀と謎敬語を振り回してる人?

 それとも、トケータイを足に付けて強化して、縦横無尽にキックを披露してる、妙にバシッと決まってる人?

 あるいは、頭のディスプレイを変化させつつ、何だかんだ器用に立ち回れてる、あざとさの塊みたいな人?

 もしくは、武士もののふ感マックスで八面六臂に暴れ倒してる、見た目だけはマドンナっぽい人?

 ひょっとして、こんなカオスな状況なのに、落ち込みつつも、割と涼しい顔で高みの見物に専念してる人?

 


「あ。

 はじめまして。

 田坂たざかくん、だよね?

 俺は、灯路ひろ 出夢いずむ

 灯路ひろの、パパです。

 紛らわしくて、ごめん。

 ツレの願いを叶えようとしたら、自ずと、こうなって。

 あと、騒がしくして、ごめん。

 俺達は、『トッケン』。

 未希永みきとくんたちとは、部活の存続権を賭けて戦って、親しくなった」

「はい?」

「気にしないで。

 これ、みんなの分。

 俺が、預かってたから。

 君に、託すよ」

「あ……。

 ……はい……」



 く分からないまま。

 出夢いずむさんにより、託されるフォワード。



 刃舞はもうさんの、『a』。

 士雨しぐれさんの、『k』。

 月出里すだちさんの、『a』。

 院城いんじょうさんの、『r』。

 出夢いずむさんの、『I』。



 これで、目標数に届きつつある。



 って、あれ?



「……士雨しぐれさん、イニシャルですよね?

 何故なぜ、パワード扱いにならないんですか?」

「あー。

 この子、改名したから、対象外になったみたい。

 そうよねぇ、ちゃん」

「言うなぁぁぁぁぁっ!!」



 戦闘続行しつつも、血相を変え、ツッコむプリンさん。

 じゃなくて、風凛かりんさん。

 


 ……なんで、ここまでネタに事欠かないんだ?

 この人。

 出オチ担当にもほどるだろ。

 


 ちょっとした謎が解明出来できた所で、閑話休題。



 しいのは、あと2文字。

 そして、その心当たりが、俺にはる。



「レイ。

 メイ」

「やっとあたし達の出番ね」

「待ちくたびれちゃったよぉ」



 俺の呼び掛けに応え、ナコードから現出する二人。

 そのまま三人でクロス・タッチ。

 

 

 レイから、『L』。

 メイから、『M』。

 


 こうして、欠けていたピースが纏まり。

 目標地点の座標を手に入れた。



 目指すは、俺達の思い出の場所。

 夏休み中、ずっと密かに共有していたスポット。



 ーー図書館の、一室。



「ここは、拙者たちが請け負うで候ですっ!!」

「あんたは、さっさと行って、安灯あんどう攻め落としてらっしゃい。

 このあたしが、足を止めずに、奴等を足止めしてみせるわ」

「あ、あのっ……。

 頑張って、くださいっ……。

 私……応援、しますっ……」

「しっかりしなよ、お兄さんっ!」

「戦果を期待してるであります、田坂たざか隊員っ!」

「ご武運を、田坂たざかさん」



 順繰りに、思いも思いの言葉を届けて、守ってくれる助っ人さん達。

 


 みんなを代表するように。

 出夢いずむさんと音飛炉ねいろさんが、拳を出して来た。



「頼んだよ、蛍音けいとくん」

「こういう時は、ドカーン、ボカーン、ズガガガガーンッ!!

 で行けば、どうにかなるよっ!!」



 音飛炉ねいろさんのオノマトペは、微妙だけど。

 俺は、二人と拳を合わせ。



「……はいっ!!

 ありがとうございますっ!!」



 友花里ゆかりさんと、レイメイ。

 3体のAIを引き連れ。

 一路、図書館を目指す。



ようやく見付けたぞ……!!

 ーーダサカァッ!!」



 と思いきや。

 ここで、トラブル発生。



 犯人が誰か。

 そんなの、分かり切ってる。



 声から伝わる、禍々まがまがしさと自尊心。

 肌を伝う、ヒリヒリとした恐怖。

 金縛りに遭ったかのように、凍り付く体。

 


 そして、なにより。

 俺を『ダサカ』と呼ぶ人間は。

 俺の知る限り、たった一人しかない。



「……地目じめ……!!」



 真面まともに動けない俺の代わりに。

 忌々しい名前を、レイが呼ぶ。



 そう。

 前の学校で俺を虐め、トラウマを植え付けた、元クラスメート。

 


 あいつに、決まってる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る