第7夜「ナイメイ」

7-1

「……助けてくれて、ありがと。

 でも、君達は、誰……?

 どうして、僕を……」



 中々に奇っ怪な格好をした3人組。

 取り分け目立つ、腰に手を当てたマント少女に、俺は尋ねる。



「ふっふっふっ……。

 よくぞ聞いてくれた、田坂たざか隊員!!

 二人共!! いつものアレ、行くよっ!!」

「えー、だなぁ」

「もっと格好かっこいのに変えね?」

「文句言わない!!

 ほら、ポジション!!」



 プリンセス・テン〇ーみたいな号令をする少女。

 他の二人も渋々、それに従い、横に並び立ち。

 なにやら妙なポーズを取る。

 


院城いんじょう 灯路ひろ!!」

母神家もがみや 織永おりえ!!」

「同じく未結希みゆき!!」

「「「3人合わせて!!

 『両親が良心を痛めてくれなかった3人組!!』」」」

「……」


 

 ダサい。

 長い。

 悲哀。



「も、もぉ無理ぃ!!」

「ギャー!!」

「おわっ!!」



 左端で片足を上げていた少女がバランスを崩し、マントっ子に向けて傾き。

 右端の、そっくりな子も巻き込んで、ドミノ倒しとなる。



 ……なんなんだ?

 一体。



「とまぁ。

 自己紹介は、これくらいにして」

「とんだだったね」

「それも、置いといて!

 我々は、君を助けに来たのだよ、田坂たざか隊員!」

ぼくを?

 どうして?」

「ふっ」



 何事もかったように立ち上がり、ビシッと俺を指差すマント少女。

 が、行儀が悪いので、同じく立ち上がった二人に、手を下げられる。



「まだまだ特訓が足りないなぁ、新入りくん。

 理由なんて、決まってるだろ?

 人助けに、理由なんて要らないから、あ痛ぁっ!!」

「普通に、コネ。

 うちの一家、あの歌姫さんとつながってるんだ。

 んで、協力を要請されたってわけ

「『歌姫』、って……」



 詳しく聞かずとも、理解出来できた。

 言わんとしているのが、誰なのか。



「ちょっと、未結希みゆき!!

 我の邪魔しないでよっ!!

 折角せっかく格好かっこく、タギタケにキメてたのに!!

 それでも、男なのっ!?」

「トキシック・マスキュリニティめろ。

 おめーが余計なはなししなきゃ済む話だろうが」

「!?」


 

 お、男!?

 こんなに可愛かわいいのに!?

 

 

「あはは。

 まぁ、初見では見破れませんよねぇ。

 ただでさえ『ハナコー』、スラックス可ですもんね。

 中性的な子に、見慣れてますよね」

「ま、まぁ……うん」

「それより、田坂たざかさん。

 もう、あまり猶予がいです。

 詳しい事情は、追ってご説明します。

 今は、なにも聞かず、気にせずに、持ってってください。

 私達の、フォワード」

「俺達は、すでに、お兄さんの勝ち筋を用意してる。

 全員で話し合って、お兄さんに必要な名前で、アナグラムを組み、フォワードに設定しといた」

「『困った時は、助け合い』!!

 って、く言うでしょ?

 てなわけで、はい。

 受け取りたまえ、田坂たざか隊員!!」



 それぞれにトケータイを操作し、フォワードをくれる3人。



 織永おりえさんが『e』。

 未結希みゆきくんが『u』。

 灯路ひろさんが『i』。

 


 ついで、サムネに表示された顔を見、仰天する。



「しょ……小学ぇっ!?」

「はい。

 今は、デコードで誤魔化ごまかしてますけど。

 普段は、現役の小学生をしてます」

「な、なるほど……。

 若返りが出来できるなら、その逆もしかり」

「はい。

 もっとも、私達の場合は、少しニュアンスが異なりますが。

 あくまで、10年近く先の姿を予想、仮装しているにぎないので」



 確かに、未結希みゆきくんと灯路ひろさんは、それっぽかったな。

 ……織永おりえさんは、下手ヘタすれば俺より大人びてる気がするけど。



 ところで、この、『母神家もがみや』という名前。

 なんだか、少し前に聞いたことような……。

 ……今は、気にしなくていか。



 なにはさておき。

 彼女がくれた僥倖に感謝しつつ、俺は3人と向き合う。



「ありがとう。

 でも、あとは、大丈夫。

 こっちで、なんとかする。

 危ないから、みんなは下がってて」

「だぁ・かぁ・らぁ!

 我の話をちゃんと聞きたまえ、田坂たざか隊員!」

「おめーが真面まともに話してないからだろ、それ」

「そういうの、要らない!」

「だったら、ニーズ生むな」

「二人共。

 キレるよ?」

「「誠に申し訳サーセンしたぁっ!!」」



 雑な丁寧語でガチ謝罪する未結希みゆきくん、灯路ひろさん。

 にしても、子供っぽいのに、妙にさまになってるな。

 様式美なのか?



「あははっ。

 醜態、晒しちゃいましたね。

 すみません、田坂たざかさん。

 けど、安心してください。

 あなたのサポーターは、3人だけじゃない。

 私達は、で来てるので」

「え?」



 意味深な強調に違和感いわかんを覚えていると。

 不意に、体育館に団体が押し寄せ。

 一目散に、こっちに走って来た。



 いや、6人て。

 多いな。



 しかも、あれ?

 なんか一人、浮いてる?

 いや、存在感とかじゃなく、視覚的に、物理的に。 

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