0.5-4
お
ジジとババには、
協調性の高さ、性格の明るさを武器に人脈が広かった
彼女は、3年生にも
そして放課後になれば図書館で
余談だが、彼女はどこかのエージェントか
他にも、彼女が
彼女の伝手により、夏休みの時点で、俺はクラスメートと顔見知りになれた。
それも、『
俺の人生で最初、そして最後の、現実世界での交流。
浮き足立つのも、さもありなん。
会場として選ばれたのは、リーズナブルなカラオケ店。
炎上中だったりボロかったりしているのでもなく、時代の流れにより近々、廃業するらしい。
理由や経緯は複雑だが、高校生としては、お手頃なのは助かる。
そんな
依然として、溶け込めているかどうかは
前みたいな
唯一、引っ掛かるのは。
よって、口出しなど到底、
そんな
俺はなるべく、平和に夏休みを送っていた。
と、思っていたのだが。
どうやら、またしても
夏休みの最終日。
てっきり、「またしても親睦、歓迎会?」とばかり踏んでいたが。
現着したのは、俺と彼女だけ。
他の参加者は
いや……妙なのは、それだけじゃない。
いつもは、フェミニンな衣装を好む
が、今日に限って、黒を基調としてパンクに纏めて来た。
やにわに、
そんな疑惑は、
「2名様のご予約ですね?」
「ああ」
「っ!?」
『2名様』!?
『2名様』だって!?
そんな
驚きつつも、案内された部屋に向かう。
そのまま室内に入り、ドアを締め、荷物をしまい、デンモクを操作し、マイクを持ち。
俺達を包む空気が。
奏でられるは、ロックな旋律。
紡がれるは、アグレッシブな言の葉。
歌うは、マニッシュに覚醒したマドンナ。
振り付けもせず、媚も売らず、座りもせず、口出しも退場も許さず。
遠慮も妥協も
真剣勝負でもしているかの
それでいて、「決して目を逸らさせまい」という、鬼気迫る声。
今までの、宴を維持する
自分の、自分の
本来の、本性の。
全力の
「はぁ……。
はぁ……」
肩で息をし、マイクをテーブルに置きつつ、ドカッと腰を下ろす
そのまま、フリーズしていた俺を見る。
「どーだ。
参ったか、思い知ったか。
これが、『
あんたに見せ付けられる、最大出力の、『
クーラーの効いた室内で、汗を拭いつつ。
額に張り付いた前髪を退かしながら、彼女はドヤる。
「あんたに、ゲームで負けた日。
あれから、ずーっと考えてた。
あんたに負けたのが、
手玉に取られたのが、我慢ならなかった。
だから、仕返ししてやろうと思った。
この
身勝手な理屈を述べ。
条件反射的にキャッチし、視認し。
手渡された
俺は、絶句した。
ネックレス・リングだ。
それも、素人でも分かる
そして、
トケータイ、『
「……『ナコード』?」
ナコード。
『
他者の『
これを使う事で、正確な記憶や想像力などが無くても、『
複数人の夢を連結させられる
当然、今まで通り、話題や記憶のシェアだって
あくまでも、『本人に近い存在を生み出せる』というだけ。
謂わば、『ゲスト参戦』みたいな
かといって、ハズレなどでもない。
これが
足りない部分がカバーされたアバター、『カバター』を呼び出せる。
こっちが強く願わすども、深く設定せずとも、ひとりでに動いてくれる名代が。
しかも、「半ば公認」という免罪符まで付いてる。
これにより、後ろめたさが薄れ、高揚感が増す。
今となっては、芸能人やキャラのナコードも販売されていたりするのだ。
といっても、値段も敷居も競争率も高いので、おいそれと手は出せないし。
俺が夢中になる小説のキャラはマイナーばかりで、幸か不幸か、そこまでグッズ展開が行き届いていないのだ。
具体的には、「元の持ち主のカバターの簡易召喚」なども可能。
ダウンロードするには、所有者の設定したパスワードやキーワードが必要となり。
他者にとっては、単なるアクセサリーと成り果てる。
以上の特性から。
これを渡すのは、かなりのリスク、羞恥心、重みを伴う。
それこそ、良くて『告白』。
悪くて『プロポーズ』みたいな物である。
じゃあ、
そんな大それたものを、この俺に?
「戦利品だよ。
初心者だったとはいえ、この私を倒したご褒美」
「……別に、
「
この
「そういうんじゃなくって。
てか、
「さぁてねぇ」
お手上げみたいなポーズを取り、はぐらかす
これは、話しても無駄そうだな。
「これといった意味なんか
ただの、気まぐれ」
「だったら余計、
こんな不相応、不平等なもの、軽はずみには」
「じゃあ、好きにすれば
それはもう、あんたの
煮るなり焼くなり、ご自由に」
「それもそれで、困る」
我ながら煮え切らない反応を続ける。
不意に立ち上がり、
「寄越しな。
あんたの、『ワコード』。
これで、貸し借り無し。
不平等ではないだろう?」
ワコード。
簡単に言えば、「R18要素をカットしたナコード」。
要は、コンシューマー版だ。
「いや、まぁ……。
……そうだけど、そうじゃないよーな……。
根本的な解決には至っていないよーな……」
「
とっとと出す。
「
「
こっちもこっちで色々、
人のシマに不法侵入しといて、タダで済むと思うな」
「だから……。
一体、
「答える義理は
「第一、ワコードなんて、持ってないよ……。
渡すケースなんて、想定してないし……」
「案ずるな。
器なら、
あんたは、これにIDを落とし込みさえすれば、それで
「
押し問答、堂々巡りでしかないので。
俺は大人しく、彼女の持参した、専用のネックレス・リング(しかもシミラー)にコピーを移し。
自分のナコードを差し出した。
それを回収し、満足気に口角を上げ。
俺からパスワードを聞き出し、オーソライズとイニシャライズを済ませ。
早速、自身の『
本人の目の前で、ワコードの力で、俺のカバターを生み出した。
「ふぅん。
悪くないね」
値踏みする
「『本気を見せてないのは、君も一緒』。
だったな。
もう、そんな温い
こっちは、誓いを守ったよ。
今度は、あんたの番。
一方的に
部屋のみならず話にさえ置いてかれた、俺を残して。
今日という日を。
俺は、きっと忘れない。
だって、そうでしょ?
俺と、レイメイとの日々。
君の正体を突き詰める
この日から、止まっていた時間、言葉が動き出した。
俺の中で眠っていた、溜まっていた言葉が。
濁流の
心を突き破らんばかりに勢いを増す。
認めよう。
俺は、
嫌なお告げの通り案の
しかし、
急がば回れ精神の元、
意中の相手の深層心理を暴き、自分との相性を確かめ、確実に告白を成功させるべく。
物語を、書き終えなくては。
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