0-2
別段、気にしてなんて
誰かに盗まれていようと、風に飛ばされていようと捨てられていようと、どうでも
だから、ノートが消えていても、バッグを軽く漁ったりこそすれど、
俺にとって大事なのは『ノート自体』でも『怪文書』でもなく、『文字を書ける
ーー自分の教室の黒板のど真ん中に、飾られているのを見るまでは。
ご丁寧に、所狭しとチョークで
「
「意味不明だし無駄に長過ぎ」
「告ハラうっざ」
「くっだらなっ」
黒板に描かれ誹謗中傷が脳内再生され、心が抉られる。
頭が痛い。
目眩がする。
呼吸が
どうして、こんな
俺は今まで、地味に過ごして来たじゃないか。
誰にも、迷惑なんて掛けてないじゃないか。
などと思っていると、フラフラしている体を、男子に蹴られた。
そいつは、腹にグリグリと踵を押し付けて来て、愉悦に満ちた表情をしていた。
「これ、誰宛?
誰に向かって、書いてんの?」
「ちがっ……。
あれは、小説の……」
「小説ぅ?」
背中を壁に強打し、吐血しかけた。
「ヒュー」
「ナイッシュー」
「
あいつ、まだ生きてんだろが」
囃し立てるギャラリー。
よく見れば、他のクラスメート
ああ。そうか。
誰でも、
ただ、退屈凌ぎに、元来の
ここは元々、そういう場所だったんだ。
「でさぁ、『タサカ』くんさぁ。
あれ、『タザカ』だっけ?
面倒だから、今日から『ダサカ』な。
つー
俺に近付いて来て、毟りそうな握力で髪をひん
「お前、
終わってんなぁ。
そんなだから、ボッチなんだよ
逆に尊敬するわぁ」
……ここは、理不尽だ。
俺だけで、楽しんでたに
誰にも話したり、迷惑掛けたりしてないのに。
向こうが、面白半分で
そんな
そいつに合わせて、クラスが一丸になって、手拍子しながら『ダサカ・コール』をして来る。
そんな連中に限って、
黒板を、俺の視界を、埋め尽くさんばかりに占領、独占してたりする。
「……ぁ……」
文字が。
俺の頭の中に広がっていたピースが、音を立てて崩れ去り、消滅して行く。
空白だけが、俺の眼前に、途方も
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