2-3
誰にも触れられない。
視覚的にも、物理的にも。
こういう時、ちょっと複雑だけど、自分の存在感の
「ねぇ」
カラオケの隅。
人気の
「あなた……
「レイの、邪魔しに。
いや……二人の、邪魔しに」
俺の言葉を受け、今度は敵意の籠もった眼差しを向けて来るレイ。
「
別に、
「自分のルックス目当てで複数の男を侍らせ群がらせ、サークラごっこしてるお
カラオケに行ったのが『他校の子』だなんて。
それだけで大抵の人は、疑わなくなるんだから。
ーーきっと同性に違い無い、って。
「だから、別に変な
それの、どこが不健全だというの?」
「レイが、てんで楽しんでいない所」
パチクリとするレイ。
かと思えば、胸に手を当てながら、再び主張する。
「
「知ってる。
けど、
ただ、歌詞ですらない、
アニ声にして、ヲタ芸やC&Rもさせて、ただリクエストに応えて、ヘタウマ以下の、
あんなの、君らしくない。
とてもじゃないけど、聴くに耐えないよ。
あんな売名以下の悲鳴……『
レイは、
代わりに、おもむろにコーラを取り出し、プルタブを開けずに。
グシャッと、割ってみせた。
「『
……
茶色い炭酸水を浴びビシャビシャになりながら
「私の声で、
もっとやって、って!
最高だ、って!
それの……それの
「君が言う所の『
皆にとってのメイは『最高』であっても、今の僕にとって今のレイは、『最低』で『最弱』で、『最悪』だよ」
伏し目がちに、けれど留まりながら、
「『君らしさ』が分からないなら、教える。
君の本気は、ロック、オルタナでこそ発揮される。
あんな、お世辞にも控え目にも『歌』だなんて呼称
それを
だから
自覚し直すのが、追い詰められるのが、怖いからだろ」
「
「いつまで待たすんだよ」
「もう用は済んだのか?」
二人だけの世界に突如、割って入って来るオーディエンス
ここに来て、
俺に矛先を向け過ぎた結果、彼女の中で俺が、理解者から敵にランクダウンしていた
溢れるのが
「てか、誰に向かって喋ってたんだよ」
「独り言でか過ぎんだろ」
ファンを装い、メイに近付く男共。
ああ、
こういう時に限って、悔しい
俺のキャラ、存在感の薄さが。
「メイ!!」
「きゃっ……!?」
メイの腕を引っ張り、一目散に駆け出す。
当然だ。連中は、つい数秒前まで俺に対して、知識どころか関心すら持っていなかった。
早い話、俺から向こうは筒抜けでも、向こうから俺は
「
「あっちだ!」
「待ちやがれ、
「さんざ褒めさせといて、舐めた
本性、魂胆の透けた男共が、慌てて追い掛けてくる。
追い掛けて、追い付き、追い越して行く。
そう……通り過ぎて行った。
「ふぅ……」
難を逃れ、
危なかった。
惜しむらくは、彼
彼
つまり、俺なんて眼中に
「大丈夫?」
一応、声をかけると、レイは未だに不服そうな顔をしていた。
「……どこまで計算してた?」
「最初に聞くのが、それ?」
予想外の質問に、無意識に笑みが零れつつ、答える。
「全部だよ。
メイが、妙な
「あなた……何者?」
「普段はアドリブ弱い
それしか突出した部分の
けど」
彼女から少し離れ、背を向け目を閉じ深呼吸した
「君が
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