第2夜「アイメイ」
2-1
夜を想起させる、漆黒のボサボサ髪。
蛍みたいな、黄緑色の瞳。
左目を隠す、顎まで
伊達眼鏡に、リュックサック。
暗いのは、言われずとも分かっている。
というより、
高1。
成績、名前、見た目、身長、声、家
なんて言うとお叱りを食らいそうだが、
強いて特徴を挙げるとすれば、小説が好きな
そして、今のクラスだけでなく、常に望んで周囲から浮いている、孤立してる
人前では「僕」と呼称するが、実際の一人称は「俺」な
述べるとすれば
けど、
ワークや辞書、教科書を貸したり(ジャージやペンは拒否られる)、日直や掃除、委員会などの当番を代わったり。
まぁ、
別に、今のポジションに、そこまで不満は
もどかしかったり、億劫だったりはするけど、常に侘しさを感じさせられるよりは
それに、鍋奉行的な役回りではあるけど、カラオケなどにも誘われもする。
部屋に二人だけの時に、オーディエンスに徹さず、給水やトイレに行く勇気も
そもそも、現代の遊びとは、昔とは一線を画するのだが。
社会人になる
どうせ大人になれば、昔のクラスメート
飲み会や遊びに誘われるのは月イチ
現状と、
特に、このリモート時代においては。
それに、騒がしいのは、
どちらかと言えば、静かな場所で本に浸っている方が性に合っている。
そういう意味では、今のスタンスはお誂向きなのかもしれない。
長くなったので、そろそろ纏めよう。
その相手が、3年のトップ・ランカー、
ーー本来であれば。
「
昨日は、ありがとね」
真ん中の最後尾で読書をしていた俺に、
モノクロに映る視界で、彼女だけが、ビビッドな輝き、存在感を放つ。
その眩しさに気を取られてラグっていると、やにわに辺りがザワついた。
「え、何?」
「どういう
「
名前を呼ばれただけでビクついてしまう、分かり易く小心者な俺。
そんな俺に対し、
「昨日、カラオケで忘れ物しちゃって。
でも、
誰なのか確証は
私の知る限り、
こういう
……なるほど。
そういう感じで来たか。
まぁ確かに。
そういう背景でも
しかも、俺みたいな転校生、後輩となんて。
それでいて、「家に届けた」とか「呼び出して渡した」とか「手紙が添えられてた」とか。
そういう余計なワン・ポイント、勘違いし
おまけに、演技めいた調子で大声で演説してる感じでもなく。
あくまでも居合わせたという
……手練だな。
ダブスタ上級者か。
人気者は大変だ。
「
「やるじゃん、
「相変わらずだな」
「
けれど俺には、どうしても、違う
「変な
「相変わらず(便利)だな」って。
「
「ダサカの
「
追って周囲から、「
……
ここで乗らずに空気を悪くした結果、お声がかからなくなるのは避けたい。
そうなっては、シカト→虐め→保護者面談ルート
そんなの、御免だ。
となれば。
「……当たってて
ちょっと、自信
何となく、
栞を挟んで本を閉じ、机の中に入れ、目を合わせながら答える。
上手く笑える
そんな俺の反応でも満足したのか。
「大正解。
我が学園の誇る、お助け名人。
これからは私も気を付けるけど。
また
その時は、
手を合わせ、茶目っ気たっぷりにおねだりする
「……また偶然、気付いたらね」
好意なんて垣間見えない、それでいて無愛想でもない雰囲気を装い、返答する。
「
偶然」
その会話を最後に、
といっても、自分の席ではなく、仲良しで構成された輪の中にだが。
「てか
「
「ごめんって。
ちょっと、他校の子達とね。
「じゃあ、今日行こう!
「あんたが保健室でサボりたいだけでしょ?
我が校の誇る平均点キーパーに、悪い
「だったら、もっと好都合じゃん!」
「少しは勉強せぇよ、色々と……。
夜まで我慢せぇよ……。
どうせ、タダなんだから……」
「てか、トケータイにデジタライズしなよ。
マテリアライズしたまんまとか、前時代的、不用心でしかないよ」
「うー……。
急な横文字のオンパレード、
「
前時代的な人間が。
「あはは。
ごめん、ごめん。
今度からは、ちゃんとトケータイに戻しとくから」
いつも通りのコントを繰り広げる
俺ならともかく。
俺に好意を寄せてる子なんて、あの中には
そんな
再び文庫本を取り出し、読書に耽る。
さて、と。
そろそろリアルから、再び飛び立ちますか。
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