第1夜「ケイメイ」
1-1
「オルタナだったんだ……。
午前2時。
本来なら、寝静まっている『
他に誰も、スタッフさえ
黄色とオレンジの間みたいな、綺麗な長い髪。
雪明りを
片耳だけ隠している前髪(普段とは逆になっている)。
出る所は出てる、均整の取れたボディ。
老若男女に出会い頭に親しまれそうな、
改めて思う。
学園一の人気者、
こうして深夜に食卓を囲っているのだろうと。
まぁ……不可抗力、図らずもとはいえ。
俺が余計な現場に居合わせてしまったからだけど。
彼女の意外な現場の目撃者に、なってしまったからだけど。
「はぁ……」
いつも理由も突拍子も
やがて
「こうなった以上、隠し通すのは無理よね」
いつもより大人びた口調と開き直った
「
そうでないと、精神的に、やってられないもの」
思わぬ提案に、俺は身構えてしまう。
瞬間、
「……
「……
「タカ……は?」
しまった。
つい、普段の調子で、現代人らしからぬ言葉を使ってしまった。
俺だって一応、一端の高校生なのに。
「
どういう意味かしら?」
「あー、いやぁ……。
……そのぉ……」
「前から気になっていたのだけれど。
あなたって、はっきりしないわよね。
年上として助言するけど。
そういうナヨナヨした所、
そんな優柔不断じゃ、もう少しで大学生になったら、苦労するわよ?」
……君が、竹を割り
などと思ってはいるものの、
そんな暴挙を披露した暁には、俺の
「……
とかじゃ、ない感じ、かなぁ……」
「……は?」
思ったままを口にすると、
やっぱり、本音を晒すなんて、
そもそも、こうして異性(しかもクラス随一の人気者)と、顔突き合わせて夜中に食事だなんて、
こんな、想像するだに恐ろしい
あー……死にたい。
数分前の自分を、この世から抹消したい。
こんなん、どう考えても、絶許案件でしかない。
などと頭を抱えていると、やにわに
この、敵意と退屈さ剥き出し状態の彼女が笑うだなんて、思いもよらなかった。
「当ったり前じゃない。
そもそも、お金なんて要らないでしょう?」
「……あ……」
すっかり失念してた。
そういえば、ここはそういう世界線だった。
「
さっさと、頼んじゃいましょう。
どうせ、財布にダメージは当たらないわ」
「
「あなたねぇ。
そんなの気にしていたら、この先やって行けないわよ?
そういう
そうでしょう?」
「それは、まぁ……その通り、だけど……」
だからといって
が、正論ではあるので、ここは
「ところで、
フライドポテトを突きながら、
「
それとも、猫被っていた
……鋭いな。
そして、
そう思いつつ、俺は正面から切り返す。
「……どっちも、かな……」
「比重は?」
「7:3、
「どっちが、どっち?」
「言った順……」
「て
……誰だって、
正真正銘の八方美人なんて、
なんて言うと拗れる可能性が多分に
「……ああいうの、好きなの……?
その……覆面系、的な……?」
「悪い?」
「ってより、意外……かな……」
「まぁ、そうでしょうね。
偽物の
明らかに上から物を言う彼女。
けど、嫌悪感は向けないのは、彼女の人
「それにしても」
頬付をつきつつ、
「
まさか、
しかも、真夜中、こっちの世界でなんて」
それに関しては、俺も同感だった。
いつも通り、聞き専に回っていた俺。
そんな俺が、役目を果たし解散した
帰り際に偶然、発見したのが、先に上がった
それも前述の通り、それまでのアイドルや西野カ◯などを歌っていたマドンナと同一人物とは思えない。
ゴリゴリのロックを絶唱している最中の。
「もうお気付きだろうけれど。
いつものは、
ガッカリした?」
「というより、ホッとした、かな……。
こっちの方が、親近感湧く気がするってーか……」
俺の感想が意外だったのか、
反応に困り、俺は引き攣った笑みを見せた。
「その割には、ぎこちないけれどね」
「相手が相手だし……」
「悪者みたいに言わないで
食事を終え、今度は両手で頬杖をつき、
「で?
これから、どうする
「……
「恨み辛みの対象の弱みを握ったのよ?
どんな報復を受けさせる
それはさておき、飾らない本音を、俺は明かす。
「……別に。
今まで通り、最低限の会話をするだけの、普通の後輩でいる。
そもそも、
「ふーん。
詰まらないし、ポジティブなのかネガティブなのか、
ぼんやりと窓の外を向きながら、けれど別の方向を見詰めながら、
「昔、言われたの。
『ロボット、アンドロイドみたい』って。
それが
どうしても、どうしようもなく、
だから、親に頼んで転校して、誰も
っても、任意に切り替えてる
「……
「もう
別に、他の誰かが
内心、少し落ち込んだ。
別に、信頼してるから、とかではないらしい。
まぁ、「そこまで軽くも愚かでもないでしょ?」とか言われるよりかは
……
この比較。
「こっちの
対人用の
そう呼んでるの。
二人合わせて、『レイメイ』。
覚え
「……そう、だね……」
他人事
とは思うけど、触れないでおこう。
「メイで
反面、精神的な負担が大きくってねぇ。
ああして、レイになって絶叫して定期的にストレス発散してないと、メイを保てなくなるの。
だからこうして、技術が開発されたのを
っても、急にカラオケ行く流れになると、
いつまでメイを維持
「あー……」
そこまで来て、
ひょっとして彼女は、俺がリークする
高3、それも志望校に合格済みなのに転校というのは
偽りの仮面を投げ捨て、人間関係をリセットし、しがなく生きたかったのではないだろうかと。
だとすれば
そもそも、人選ミスも
「……ま、別に
あと半年の辛抱だもの」
不服感を漂わせながらも、妥協する
安心したのも束の間。
「ところで、
「っ!?」
ほらー、やっぱりこうなったー。
そりゃそーだって。
このままあっさり解散して、明日からまた普段通りシレッと接するとか、そんな都合の良い
などと頭を抱えながらも、事実確認だけは済ませようと、俺は口火を切る。
「つ……つまり……?」
ビクビクする俺とは対象的に得意気に笑い、テイスティングでもする
俺の命運を分ける、運命の一言を。
「同盟を結びましょう。
「……はい?」
まさかの勧誘に、素っ頓狂な声を出してしまう。
一方、
「ずっと憧れてたのよ。
けれど、ギスギスした縺れとか、ドン引かれる危険性とか、内緒話こそシェアしたい性分を条件に入れると、どうしても異性しか選考
でも、あなたなら」
ビシッ!! と、まるで「ようこそ」と歓迎せんばかりに、俺に右手を差し出す。
といっても、届いてはいないが(離れてるので当たり前である)。
「
……
「
「面白いのは、あなたでしょう?
まさか、こんなに近くに、ここまで好条件揃い踏みな有料物件が潜んでるなんて、思ってもみなかったわ。
もっと早く仲間、同士になっておけば
「無茶言わないでよ……」
時代が時代なら、一日に何人もの異性をフり倒しそうな人に
余裕も蛮勇も理由も
「で?
乗るの? 乗らないの?
断った所で、あなたにはデメリットは
「……
中々に
けど、不思議と、嫌な気はしなかった。
シンプルに、願ってしまったのだ。
もっと、彼女について、詳しく知りたいと。
「
って感じで、
「
そういう
「それ
「交渉成立。
只今より、『レイメイ同盟』結成ね」
……また、安直なネーミングを……。
あーでも、『チーム・レイメイ』とか『レイメイト』よりかは
覚え
「それと、
握手を済ませ手を離したタイミングで、
「『
その名前、『
個人的には、『レイ』推奨よ。
これから、こっちでメイと絡む
正直言うと、異性を呼び捨てにするのは、年頃にはキツいのだが……。
そういう事情が
それに、愛称だったら、幾分か敷居も下がるし。
となれば、
「じゃあ……『レイ』」
なけなしの勇気を持って呼ぶと、レイは「ふふん」と胸を張り、満足
「それじゃあ、『ケート』。
改めて、
気楽に、楽しみましょう。
どうせ現実世界では、
そう。
関係が進展した所で、呼称をアップデートした所で、リアルには少しの影響も及ぼさない。
世界にすら内緒の、
正確には、それだけが理由ってんじゃないけど。
他の誰も、知る
正直言うと大分、複雑だ。
けど、だからこそ安請け合いした面も
「……こちらこそ、
こうして俺達は、再び握手を交わした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます