第60話
「ッ!」
世界最強として君臨し、勇者と呼ばれた正行の威圧を真正面から受け、壁に叩きつけられた雨宮さんは気圧される。
まぁ気圧されるだけで済むのはすごいけど。
一応壁に叩きつけられているわけだし。
「だ、だが」
「まだあるのか……?」
それでもなお食ってかかろうとする雨宮さんを正行は睨みつける。
……よくまだ食ってかかろうと出来るね雨宮さん。
「彼女の言っていることもわからなくもない」
二人の争いに一人の男が割って入る。
雨宮さんの仲間として。
「お前までもか……」
正行は『ディールークルム』 ギルドマスターである佐藤くんを睨みつける。
「当然でしょう」
佐藤くんは正行に睨まれても平然と言葉を返す。
ディールークルムはオタクたちが多いと聞いていたのだが、ギルドマスターである佐藤くんはオタクたち陰のものではないだろう。
陽のものに睨まれて平然としていられる陰のものはいないのだ。
「あなたは彼の強さを知っているかも知れないが俺たちは知らないのだ。それに反発を覚えるのは当然の話しだろう。せめてそこであなたの影に隠れて座っている本人に自らの力を見せてもらわなくては」
「お前……」
正行が怒りの念を込めて佐藤くんを睨む。
……?
なぜこんなにも正行は焦り、怒っているのだろうか?
ただ、力を見せればいいだけだろう?
「彼らの言うとおりだ」
僕はうなずく。
「いきなり現れた僕の力を疑うのは当然だろう」
僕は内なる魔力を開放する。
「どこからでも好きなように。力の差というものを存分に教えてあげるよ」
荒れ狂う魔力がここを支配する。
全ての力を封じ込み、僕の魔力だけがこの場を支配した。
誰も喋らない。喋れない。
皆が気圧され、威圧され、萎縮する。
彼ら、彼女らは理解した。
僕と自分たちの間にある絶対の壁を。
一般的には魔力という概念は知られていないが、上位陣である彼ら、彼女らならば当然のように魔力を知っていて、その感知を出来るだろう。
そして、理解したはず僕の底しれぬ魔力を見て。
僕の一番近くで行動を共にした明日香ですら緊張を覚える絶望的な力。
「どうした?誰も来ぬのか?」
僕はゆっくりと立ち上がる。
彼ら、彼女らを威圧するように。
バチバチ。
あまりにも濃すぎる魔力に空間が悲鳴を上げ、弾け出す。
「少しくらい反応あっても良いだろうに。さて、僕の力に疑問があるものはいるか?」
誰も反応しない。
「いいだろう」
僕は魔力を霧散させ、席に着く。
それ当時に皆が崩れ落ちた。
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