第54話

「後ろは僕に任せてよ。神風残響流 千本桜」

 明日香と桜が戦っている後ろから襲おうとしていた魔物たちを刀で全員切り刻んであげる。

「ありがとう!」

 圧倒的な僕が力を貸すのは若干反則感があるのが、元々明日香と桜二人だけでダンジョンに潜るというのが土台厳しいわけで、これくらい力を貸してあげてもいいだろう。

 どんどんダンジョンを進んでいき、二人が引き返したという階層に来た辺りで段々と敵が強くなっていくとともに二人だけでは厳しくなることが多くなり、僕が力を貸すことが多くなってきた。

 まぁだからといって僕が本格的に力を貸して戦うことはない。 

 あくまでピンチになりそうだったときに特別に力を貸すだけである。

 僕が圧倒的すぎるので、僕が力を貸しても二人の成長に機会を奪うだけ、二人のためにはならないだろう。

「桜。もっと足を動かして」

「うん!」

「明日香はもっと視野を広く。周りを見れない遠距離アタッカーなんか意味ないよ?」

「わかった!」

 僕は戦っている二人に逐一アドバイスを送っていく。

 というか、このくらいしか僕に出来ることはない。

 さっきから僕は二人のそばでぼーっと突っ立て、二人が危険になったら少しだけ手助けし、僕を襲ってきた魔物と踊ることしか出来ない。

 魔物と社交ダンスをして遊んでいたら、称号【魔奏狂宴曲】とかいう無駄にかっこいい称号を得た。

 僕は暇で魔物と社交ダンスしていただけなのに。

「ふー」

 しばし、魔物と社交ダンスしていると二人が魔物を全部倒し終えたので今まで一緒に踊っていた魔物をサクッと狩る。

 んー。経験値が美味しい。

 まぁ次のレベルまでに必要な経験値の量が絶望すぎるんだけどね。

「「イエーイ!」」

 陽キャの女子らしく楽しそうにハイタッチを決めている。

「「イエーイ!」」

 そして、二人が

 くくく、僕は孤高の戦士にしてぼっち。

 そんな簡単に応じるわけが……。

「イエーイ!」

 可愛い女の子二人のハイタッチを拒む奴いる?いねぇよなぁ!!?

「回復魔法をかけていくよー」

「あー!気持ちいい!」

「ありがとー」

 僕は二人に回復魔法をかけてあげる。

 これで二人の体力とスタミナは全開だ。

「やっぱり零がいると安定感も安心感も段違いね」

「そうだね。一緒にいると、安心する……」

「ははは、そう言ってくれると嬉しいよ」

「よし!じゃあこの後もダンジョン攻略頑張ろ!おー!」

「「おー!」」

 僕は明日香や桜と同じように拳を天へと掲げた。

 

 僕たちはダンジョンの外が暗くなるまでダンジョンに潜り続けた。

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