第50話

「急げ!ここももうすぐに崩れるぞ!」

「わかっている!今急ぐ!」

 僕と正行は全速力で走る。

 僕と正行が通ってきた道の壁にも亀裂が走り、僕達を支える地面にまでも亀裂が走っている。

 今にも崩れてしまいそうだった。

 僕達は賢明に足を動かした。


「はぁはぁ」

「大丈夫?」

「あぁ、なんとか」

 僕達はあそこが完全に崩れる前に抜け出すことが出来た。

 僕達が入った穴も塞がっていて、魔力の玉ももう見られない。

 いつもどおりのダンジョンへと戻っていた。

 それにしても、奥に走り去っていたあの化け物はなんだったのか。

 あの後あいつはどうなったのか。

 あのまま塞がれて、閉じ込められたのだろうか。

 ……流石にそんなことはないだろうがな。

 おそらくもう一つあの空間には出口があったのだろう。

 あの化け物とはまたどこかで戦う必要があるだろう。

 というか、あの空間はなんだし。

 無限に魔物が湧き上がってきていた。

「それにしても、凄まじいんだな」

「まぁね。……君も大概だけどね?」

 僕は元々異世界で戦闘し、魔王まで倒したのだ。

 そりゅ他の人と比べて強いのは当たり前である。

 スタートした時期がそもそも違うのだ。

 だが、この正行とかいう男は違う。

 あの日初めて魔力に目覚めた人間のはずだ。

 たった一年。

 たった一年であのレベルまでに至ったとするならば彼は間違いなく天才だろう。

 まぁ何かからくりがあるんだろうけど。

 正行の魂はどこかいびつで、肥大化しているし。

「君に言われても嫌味だとしか思えないよ。僕より全然勇者じゃないか。強さも勇気も何もかも」

「まぁ一応。僕は勇者の称号を持っているからね」

「へぇ。あの称号に何か表示されることってあるんだ」

「まぁね。偉業を成し遂げた、あるレベルに到達した。など厳しい条件をクリアすれば獲得できるよ。ほとんどの人は持っていないだろうけどね」

「なるほど。じゃあ僕も何か称号をもらえるように頑張るよ。それにしても今日は本当に助かった。君がいなければ僕は何も出来ずに死んでいた。勇者としての仕事を果たし、生きて帰ってこれたのは君のおかげだ。本当にありがとう」

 正行が深々と頭を下げる。

「別にいいよ。若干騙され気味だったのは許せないけど、あれを放置してたらとんでもないことになっていそうだったしね」

「そう言ってくれると助かる」

「じゃあもう帰っていいよね?」

「あぁ、当然だ。

「じゃあ帰るね。バイバイ」

「あぁ」

 あー。今日はつかれた。

 休み明けにこれはきつい。

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