第47話

 鉄と、血と、悲鳴。

 鉄臭い、血生臭い匂いが充満し、魔物の汚い金切り声が響く。

「あー、減らない。マジで減らない」

 僕たちが暴れだしてから早30分。

 ものすごい数の魔物を殲滅していあ。数にして、そう。

 億は軽く超える。

 それなのに終わりは見えない。

 意味がわからない。

 僕は幾数千ものの英雄たちの武器を操りながら愚痴る。

「全くだな!」

 正行が自分に飛びかかる魔物を切り倒しながら僕に同意する。

 正行。

 僕の想像以上の強さを持っていた。

これなら、明日香どころか異世界の強者なんかよりもずっと強い。

まぁ戦闘方法は、勇者とはとても思えないようなものであったが。

呪いや闇魔法。勇者どころか魔王よりの戦い方だ。

 だが、ちゃんと戦力にはなってくれているので、いい。

 ほんと、予想以上の強さだったよ。正行に関しては。

 これなら他のメンバーたちを足手まといだと判断するわ。

「はぁはぁ」

 だが、段々と正幸の息が切れてくる。

「『ヒール』」

 僕は魔法を使って、体力を回復させる。

「まだまだ終わらないよ!頑張って!」

「回復助かる!」

 正幸はまたキレキレの動きで動き始める。

 

 ■■■■■


 更に30分。

僕が殺した魔物の数は百を超え、万を超え、億を越え、兆へと達す。

それ相応の経験値が僕の元へと入り、自らの体がより強く、より凶悪なものへと変わっていくのを感じる。

人間だった時とは比べ物にならないほど、1レベル上げるための経験値の必要量が増加しているが、こんなにも魔物を倒せばレベルが上がっていく。

僕のレベルが10へと達した時、新しい力が、権能が我が身に宿ったのを感じる。

「【人の権限:冥魂の誘い】」

弱き者には死を。

汝は我が前に立つ資格無し。

数千、数万、数億、数兆。

弱き魔物が一斉に消滅し、死に至る。

「嘘、だろ……」

呆然と正行が声を漏らす。

残されたのは強い魔物だけ。

明日香や桜では歯が立たないような魔物だ。

だが、僕の敵ではない。

残された魔物たちは全て僕が操る英雄たちの武器によって殲滅された。

「そんなのありかよ……」

呆れたような声で正行が呟く。

「勇者とか最強とか……笑っちまうな」

正行は自嘲的な笑みを浮かべる。

「ちゃんと強かったよ」

 僕は一言正行に慰めの言葉を告げる。

その瞬間。

ぞわり。

久しぶりの悪寒が僕の体を走る。

後ろを振り返るとそこにいたのは、一体の化け物。

オーガのような立派な角を持ち、ゴブリンのような醜悪な顔、オークのような巨躯を持つ化け物がそこにいたのだ。


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