第45話

「さぁ!一緒にダンジョンに潜ろうか!」

「……え?」

 僕はハイテンションな正行の隣で疑問符を上げる。

 なんで僕がここにいるのか。自分でもよくわからなかった。

 明日香に呼ばれてここに来たら、明日香はこの場に姿を現さず、その代わりにこの男がこの場に現れた。

 そして、現れると同時に言った言葉があれだ。

 は?

「いやー実はダンジョンで異常が見つかってしまってね」

「はー」

 それと僕のどこに関係があるんだろう?

「今回のは結構ヤバそうだから、君の力を借りたいと思ってね」

「帰って良い?」

「頼むよ。流石に僕一人で行くのは心配で」

「自分のギルドメンバーに頼みなよ」

「少し彼らでは力不足でね。頼むよ!ほら!この通りだ!」

 深々と正行が僕に向かって頭を下げる。

 ここでみんなに思い出してほしい。

 この正行は世間一般で勇者と言われる男だ。

 そしてここは別にダンジョンでもなんでもない普通のところだ。

 当然注目が集められる。

 正行が頭を下げているあの少年は一体何なんだ!?と言う感じで。

 居心地がかなり悪い。

 なんか、睨んでいる人もいるし。

「ちっ。いいよ」

 僕は渋々了承する。

「いやぁー。助かるよ。君は優しいんだね」

「……」

 なんだろう。

 このイケメンすげぇ癪に障る。

 あんましこういうの好きじゃないんだけどなぁ。

 基本、一人行動が好きなんだが。

「じゃあ、行こうか!」

「うん」

 僕はハイテンションの正行に連れられてダンジョンに向かった。


 ■■■■■

 

 ん?

 僕はダンジョンに入ったと同時に変に溜まっている魔力を感じて、首を傾げる。

 なんだろう?

 なんて言えばいいか。

 本来均等に広がっているはずの魔力が一部に偏っているというか。魔力が玉になって固まっている。

 なんだこれ?

 魔力の流れがおかしい。

「あ、やっぱわかる?」

「うん。まぁ」

 ……確かにこれは普通じゃないかもしれない。

 僕だって初めてである。

「こっちだよ」

 僕は正行に連れられてダンジョンを進んでいく。

 どんどん玉になって固まっている魔力の数が増えていく。

「ここだよ」

 目的地にはすぐにたどり着いた。

 まぁ当然だ。

 ここはまだ一階層なんだから。

 ダンジョンがいくつもの層から成っていて、一階層、二階層と言った感じで階層を重ねていく。

 階層の数が増えれば増えるほど魔物は強くなっていく。

 本来はこんな一階層なんかに大事な用事なんて出来ない。

 だが、はっきりと分かる。

 ここは明らかにおかしい。

 ここらへんは玉になって固まっている魔力に覆われている。

 魔王城と同じくらいの魔力濃度だ。

「ここだよ」

 正行が手をかざす。

 そして、魔法を解除する。

 強烈な魔力が僕を叩きつけると同時に大きな穴が姿を現した。

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