第43話

「零ー!零ー!いるー!」

 ずっと静かだった一室に久しぶりの音が響く。

 それは明日香の声だった。

「んー」

 僕は気怠けな返事をする。

「ふわー」

 眠い。

 僕が久しぶりの仮眠を取っているというのになんだと言うのだ。

 僕は自分の顔に載せてあった本をどける。

「えぇー。ここにいるのね。電気をつけるわよ」

 少し引いたような声がした後、この部屋の電気がつけられる。

 これも等しく久しぶりである。

「……ん。眩しい」

「うわ。本だらけ。こんなところでどんな

「ちょっと待って」

 僕は無理やり至るところに置かれ、散らばった本の数々を強引にどかして僕の方にやってこようとする明日香を静止する。

「ほい」

 魔法で散らばった本を操作し、壁一面の本棚にきれいに収納していく。

「すっご。というか、こんなに簡単に片付けられるなら予め片付けておきなさいよ」

「うるさいなー。それで?何のよう?」

 僕はぶっきらぼうに答える。

 久しぶりの安眠を邪魔され、僕は結構苛立っている。

「そりゃ心配してよ。ここ一週間一度も顔を見せないから」

「調べ物をしているって言ったでしょう?」

「えぇ。だとしても一週間も顔を出さなければ心配の一つもするわよ。それで?ちゃんとご飯は食べているの?」

「……食べてない」

「駄目じゃない!」

 まるでお母さんのように明日香は声を荒らげる。

「もう!少し待ってて!何か作ってくるわ。それにしてもすごい本の数ね……。これは全部ダンジョン関連の?」

「ん。そうだね」

 ここに集められている本はすべてダンジョン関連の本だ。

 一年くらいでここまで大量の本が出版されているのだと言うから、驚きである。

 ここに置いてある本は魔石の有能性などがまとめられた海外の論文や、よくわからない有識者(笑)の自信満々な解説本。

 僕は日本だけでなく海外も含めた全ての本を集め、それら全てに目を通したのだ。

 ようやく5分の4くらいを読み終えた。

 後少しである。

「じゃあ、待っててね」

 明日香が部屋から出ていった。

「ん」

 僕は仮眠を続けたかったが、待っていてと言われたので、寝ることなく本を読んで待った。

 

 ■■■■■

 

 しばらく待っていると、明日香が暖かそうな雑炊を持ってきた。

「久しぶりの食事だろうから、さっぱりとしたものを作ってきたは。具も零から聞いていた好物を優先的に入れておいたわ」

「あぁ。ありがと」

 明日香の言う通り雑炊は僕が好きなものがたくさん入っていた。

「どういたしまして」

「いただきます」

 僕は久しぶりの食事に口をつけた。

 うん。

 美味しい。

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