最古の英雄譚〜魔王を倒した異世界帰りの勇者は現実世界で無双するそうですよ？〜

第42話

「はぁー」

　僕は深々とため息を付いた。

　めちゃくちゃ印象悪かっただろうなー、と自己嫌悪する。

　普通にやりすぎた。

　めちゃくちゃやりすぎた。

　別に敵対するつもりはなかったんだけどなー。

　しばらく大人しくしていたかったらダンジョン関連であまり関わらないでくれると嬉しいって言うだけのつもりだったんだけどなー。

「零があんなに過激に行くとは思わなかった」

「私としてはレベルが１だってことを聞きたいんだけど？」

「……ごめんやん。あんなに荒らすつもりはなかったんだけど、まぁ、ね。血が騒いだと言うか、なんというか」

　本当に荒らすつもりはなかったのである。

　でも、異世界だと勇者という名を利用しようと色々な汚い大人が僕の周りを群がるようになっていたので、ほぼ条件反射的にあんな反応をとってしまうのだ。

「まぁ私は零についていくだけだけどね」

「お？嬉しいこと言ってくれるじゃん？」

　僕はからかうように明日香を軽く笑う。

「うるさい！」

　明日香は少し照れたように僕を軽く殴った。

「私としてはレベルが１だってことを聞きたいんだけど？」

「うるさいな！それは後で

「ひっどい！ひっどい扱いだよ！抗議するよ！私の扱いの改善を！」

「へっ」

「ムキー！」

　桜は僕をぽかぽかと殴りつけた。

　ぐへへへ。

　ハーレムじゃい。

「これからどうするの？零は」

「僕はとりあえず調べ物かな。色々とツッコミどころとか。僕の知識と違うところなんかもあるから、それを確認する意味も込めてね」

「なるほど。……ねぇ」

「ん？何？」

「零が持っている情報って何なのか。何でそんなことを知っているのか。教えてくれないの？」

「……」

　僕はしばし沈黙する。

　しかし、答えはすぐに出た。

「無理かな。教えられない」

「……そっか。まだ……」

「別に僕が二人のことを信頼していないわけじゃないんだけどね」

　ただ、言わないほうが良い。

　思っていたよりも距離感が近づいてしまったが、ここの境界線は越えちゃいけない。

「そう。……うん」

　え？なにこれ？

　空気感地獄なんだが。

　ここでいい感じのひところ言えたらモテるんだろうけど、あいにく僕は女心というものが一ミクロンもわからないのだ。

　あの子にもよくそれで怒られていた。

　これで僕が何か変に一言を発したとしても、空気が凍りつくだけなので、変なことは言わない。これが正解なのだ。