第41話

「はい?」

 僕は声がした方を向く。

 そこにはすごく不機嫌そうな表情を浮かべた男が一人。

「誰?」

「ちっ。俺の名前も知らねぇのかよ」

 不機嫌そうな男は舌打ちを1つつき、悪態をつく。

「おい!そんな言い方はないだろう!」

 正行が不機嫌そうな男を睨みつけ、一喝する。

「おいおい、リーダーさんよ。舐められっぱなしで良いわけねぇだろうが」

 だがしかし、不機嫌そうな男は正行の言葉を一蹴する。

 ……うん。

 ごめんね。

 僕が悪いね。

 でも、事実なんだよ。

 どうしようもない事実なんだよ。

「ふむ。確かに、ごめんね。いきなり現れたぽっとでの人間に舐められるのは気に食わないよね」

 僕は席から立ち上がり、不機嫌そうな男の方に近づいていく。

「でもさ」

「な、なんだよ?」

「事実なんだよ。僕は君よりも圧倒的に強い」

「て、てめぇ」

 僕はとうとう額に血管を浮かび上がらせるようになった不機嫌そうな男に近づいていく。

 そして、僕が不機嫌そうな男の間合いに入った瞬間。

 不機嫌そうな男は無駄のない、いや結構無駄はあるけど、十分上手く流れるような突きを放つ。

「ほいさ」

 僕は、その腕を軽く掴み、そのまま投げた。合気の要領で。

 僕に軽々しく投げ飛ばされた不機嫌そうな男は勢いよく天井に体をぶつけ、落ちてくる。

 あ……ちょっとやばいかも。やりすぎた説ある。全然ある。

「は?」

 不機嫌そうな男は何が起こったのかまるでわからないと言ったような表情を浮かべ、ぽかんとしていらっしゃる。

 あ、やりすぎではなさそう。

「まだやる?」

「……っ!てめぇ!」

 今度は蹴り。

 僕は足をそのまま掴みぐるんと一回転させて、床にどーん!と叩きつける。

「まだやる?」

「しっ!」

 不機嫌そうな男はまだ諦めない。

 今度は魔法まで使いだした。

 炎をまとわせた拳を僕に向け、今までにないくらいの速度で振るった。

 まぁ無駄だけどね。

 僕はもう投げるのも面倒なので、普通に前蹴りで吹き飛ばす。

「がっは!」

「まだやる?」

「ゲホッゲホッ」

 ……。

 おやぁ?やらかしてしまった説あるのでは?

 今度こそやらかした?

「な、なんなんだよ。おめぇ」

 よかった。

 大丈夫そう。

 僕は少し恐れを見せる不機嫌そうな男に顔を近づけ、呟く。

「お前と僕とでは潜ってきた修羅場も場数も違うんだよ」

 殺気。

 僕はそれすらも込めて呟く。

 殺気込めて言えば、ビビってつかかってくるのやめてくれるだろう。

「ひっ!」

 不機嫌そうな男は短い悲鳴を上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る