第39話
「はー。ここが日本最強の冒険者がいるというギルドなのね」
「らしいね」
僕は大きな屋敷を見上げて呆然と呟く明日香に声を返す。
僕一人だけで来るのも味気ないので、明日香と桜と一緒に来ているのだ。
本当に大きくてすごい屋敷だ。
異世界の貴族の屋敷とかのほうがすごいけどね。
「でも、多分お二人によりも弱いよね。その人」
「もしかしたら桜よりも弱いんじゃないかな?」
「いやー、流石にそれはないと思うよ?」
「どうかな?」
僕は割と本気で桜のほうが強いんじゃないかと思っている。
そもそも自分の命のかけ方も知らない人が強く慣れるとは思えない。
抜刀隊のみんなは、家を壊された、町をめちゃくちゃにされた、友達を殺された、恋人を殺された、家族を殺された。
魔物の手によって。
彼ら、彼女らが内に抱える怨嗟の炎は、憎しみの炎は、今も極限なく膨れ上がっている。
彼ら、彼女らは自らの命を犠牲にしてでも魔物を殺す力を欲したものたちだ。
桜もそのうちの一人。
所詮魔物に襲われることなく、平和に暮らし、自らの意思でダンジョンに向かっただけの甘ちゃんに桜が負けるとは思わない。
その勇者くんが僕みたいに神に愛されたとしか表現できないほどの才ある人間じゃなければの話だけど。
でもまぁ確実に明日香を超えることはないだろう。
明日香がいつの間にか手に入れたユニークスキルが強すぎるし。
模擬戦で初めて見て食らって普通に負けるかと思った。
「まぁ実際に会ってみればわかるよ」
僕は門に取り付けられたインターホンを鳴らした。
『はーい』
インターホンから若い女性の声が聞こえてくる。
デュフ。
いい声でやんす。
ペロペロしたい。
「あー、僕達首相である官義豪様から紹介された間宮 零って言うんですけど」
『あー、君たちがあの市の!ちょっと待ってて。すぐに行くわ!」
しばらく待っていると、美人さんが僕たちの前に転移してきた。
おっほ。
いい乳をしていらっしゃる。
「うわ!」
いきなり転移してきた女性に桜が驚きの声を出す。
僕と明日香は別に対して驚かない。
僕も明日香も転移くらいできるし。
「あら?あまり驚かないのね?まったくつまらないわね」
一切驚かなかった僕と明日香を見て女性が少し不満げな声を漏らす。
「じゃあ、行くわね」
女性が僕と明日香と桜の手を掴み、転移を発動させる。
そして、
そして、僕はひとり残される。
あ……やっべぇー。
レジストしちゃった。
僕は慌てて明日香の魔力を追って転移を発動させた。
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