第37話

「な、何をしてい」

「舐めるなよ?」

 動揺して叫んだ進太朗の一言を僕は威圧し、止める。

 僕の体から溢れ、荒れ狂う魔力がその場を支配し僕の前に存在するちっぽけな存在は何もできない。抗えない。

 僕に対し本能が、ひれ伏す。

「僕は認めよう」

 静まり返った空間で僕の声だけが響く。

「政治とは、清濁併せ吞むものだ。強者に対して、人質という手段を用いて対抗するというのも素晴らしい策の一つであり、君たちは君たちが採りうる選択肢の中で最善に近しい策を選べたであろう」

 僕はそこで一つ言葉を切る。

「だが、力が足りない」

「何もかもが足りない」

「足りない。足りなすぎるのだよ。僕に対抗する手段などはなから存在しないのだ。策など取りようもないのだ。君たちは僕に首を垂れ、命乞いするしかないのだよ。あぁ、そこの。動かない方がいいぞ」

 僕は天上を、天井に隠れ潜んでいる男たちに向かって告げる。

 僕の一言を聞いてぴたりとうごめいていた気配が消える。

 うん。うん。変に動かれても困る。

 別に僕は人を殺したいわけじゃないからね」

「僕は単騎で世界を滅ぼす。世界を相手どって軽々しく勝利することができるのだよ。僕のレベルは99。世界に認められし、勇者であり、英雄なのだ」

 僕は一度大きく息を吐いた後、放出していた魔力を抑える。

「好きに発言することを許可しよう」

「謝罪を。一国の代表として私があなた様に対し謝罪を申し上げる。大変申し訳ない」

 いの一番に官首相が僕に対して頭を下げる。

 決断速すぎん?

 ウイルスの時もそれくらいの対応をしてほしかったんだけど。

「だが、勘違いしないでほしい。別に脅したわけではない。しかし、そうとらえられてしまったというのならこちらの落ち度である。本当に申し訳なく思っている。私たちも未知の敵を相手に混乱しているのだ。そんな中で現れた救世主ともいえる君に頼りたいという気持ちが先走ってしまったのだ。国民である彼らを保護するのは国として当然の責務であるし、子供たちに何か責任を負わせることなどありえない。君たちはまだ大人たちに守られるべき子供なのだ。君たちは好きに動いてもらって構わない」

 ……ほんと。

 本当に食えない爺さんだよ。

 脅しなんかなかったことにしてきやがった。

 しかも、僕がダンジョンにもぐることをあらかじめ理解して話している節を感じる。

 それに、元々脅しなんか頼りにしてなかったかのようにも思える。

「あぁ、実はこの国ではギルドという独自のシステムがあるのだ。日本最強のギルドのギルドマスターに君の話をしておこう。気が向いたら出向いてくれたまえ」

 ほんと食えない爺さんだな!

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