第11話 真っ赤な顔したサンタクロース


「良い加減に辞めろって言ってるだろい!!クソガキがぁっ!!」 


 突如として、エントランスホールにそんな怒声が響いた。


 声のした方向を見ると、そこには一人の少年を複数の大人たちが取り囲んでいる姿があった。

 どうやら相当に揉めているらしいが、ここからでは内容が把握できない。

 ただ、察するに今までチーム組んでいたサンタクロースの一人が、どうやらチームを追い出されるかどうかって話をしてるようだった。

 すると、そんなサンタクロースのチームを見て、物珍しそうに小首を傾げた。


「へぇ……。珍しいこともあるものですね。あのチームが揉め事だなんて」


「知ってるのか?」


「ええ。チーム名は、確かアクサンドリアス。チームリーダーはマスターランクのガロリオ・エース。アレクサンドリアスの名前の通り、ユーロジオ圏のアレクサンドリアで活躍するブラックサンタのサンタクロースチームですよ。確か、あそこのメンバーは仲が良いことで有名だったおと思いますが……」


 そう説明するエリーゼの視線の先には、一人の少年を複数のメンバーで責め立てる光景が繰り広げられていた。

 正直に言って、どちらが悪いのかは分からないが、こちらから見る分には仲が良さそうには見えないな。

 と言うか、チームメンバー全員が一人を相手に袋叩きとか、仲が悪いと言うよりもイジメだな。あんまり見ていて気持ちのいいもんではないなぁ。


「……どうやら、話から察するに、あのチームの少年、チーム内で随分と足を引っ張っているようですね。どうやら、それが今になって爆発した、と」


「ふーん。ま、年も若いみたいだし、そう言うことはあるだろうな。つっても、見る限りあの年でサンタクロースになってるだけでも十分すごいと思うんだがね」


「そうですね。聞く限り、まだサーヴァントランクの少年に求めるのは、無理のある内容の仕事を押し付けているようですし。まぁ、内実を知らない以上、下手に関わらない方が良いですね」


 まぁ、そりゃそうだ。チームで動くサンタクロース、それもブラックサンタみたいな直接命のやり合いをするようなチームであれば、誰が本当に悪いかは関係ない。

 問題を起こすやつの方が悪い。だから、責め立てられている少年はこのままチームを追放されるだろうし、そこに首を突っ込んだところで、どうにもならんだろう。

 しかし、それはともかくとして、こういう場で問題を起こすってのはそれはそれでやめてほしいもんだ。見ているこっちの気分がイラついてくるからな。

 俺はため息と共に立ち上がり、その揉めているチームに向けて歩き出しかけた。

 すると、そんな俺に向かって、エリーゼがちょっと、と声をかけた。


「仲裁ですか?知らない他人の喧嘩に口を出すのは、あまり感心しませんよ?」


「そんなことをするつもりはねぇよ。ただ、場をあらためてもらうだけだ。ここで色々と揉められても、俺には鬱陶しいだけだしな」


 そ。俺だって他人の喧嘩に口出すほど野暮じゃねぇ。ヒートアップしている若い衆に一回落ち着いてもらうだけだ。

 だから俺も、ここは冷静に、落ち着いて、にこやかに話しかけるだけだからな。


「よう、お兄さん。ちょいと、話しても良いかね?こんなところで喧嘩するなんざ、大人気ないぜ?ほら、ジャーキー一本やるから落ち着けって」


「あ?!関係ねぇ奴はスッコンでろ!!」


 俺が揉めているサンタクロースのチームに声をかけるなり、チームリーダーらしき男は、そう怒鳴りながら俺の手にしているビーフジャーキーを床に叩き落とした。

 ハハハ。こやつめ。随分と威勢が良くて、元気のある奴じゃないか。


「上等だコラァ!!ウゼエんだよクソがきどもが!!喧嘩売ってんだったら買ってやらあ!!!テメェの持ってるトナカイ出せや!!全部鉄屑にして、テメェもゴミにしてやるよ!!」


 舐めやがって、クソッタレどもが!!そこまで喧嘩してぇなら相手してやるよ!!

 俺はビーフジャーキーを叩き落とした男の顔面を殴り飛ばすと、間に入ってきた男の鼻面に頭突きを入れた。

 このまま全員、この場でぶっ殺してやる!!





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