第3話 ゾス・クリストロウはサンタクロース。 

「おいおいおいおい待て待て待て待て。何言ってやがんだよ、テメェ!!」


 俺は漁師のジジイに大口を叩いたエリーゼに、思わず大声上げながら両肩を振り回した。


「アリアもカノンも居ないのに、あの化け物を倒せってのか?!無茶苦茶言うなよ!!」


「ええ?だって、『コンポーザーもチューナーもいらないぜ。この程度の依頼なら、俺一人でこなしてやろう』って言ったのは、ゾスさんじゃないですか」


「いや確かに言ったよ!言ったがよ!事情が全然違うじゃねぇか!そりゃサーヴァントランクだったらの話だろうが?!こんなヤベエ状況だって俺は知らねぇからな?!」


「それはそうですが。逆に聞きますが、だからといって、本当にこのまま逃げても良いんですか?」


 そう言い返されて、俺は思わず黙り込んだ。


 災害度数5.5は、決して無視して済む様な軽い数値ではない。


 災害度数を他の数値で例えるのは難しいが、単純に震度と同じものだとしても、震度5以上の地震が起きる様なものだ。

 死人が出ずに済めば御の字。人里にデカい被害があるのなんざ、決まりきってる。


 こいつがサーヴァントランクの依頼として通った理由は定かではないが、恐らくその理由の一つにはこの巻き貝イカが大人しく、死人が一人も出ていないからと言うのは間違いなくあるだろう。

 下手に手を出してしまえば、それが原因でこのデカブツを覚醒させ、大きな被害を出してしまうかもしれない。


 じゃあ、このまま逃げたとして、それで何の被害も出ずに終わるのか?

 そう言い切れるものでもない。

 こいつが今まで暴れなかったのは、単に通常の生育環境と現在の環境とが合わず、その差に体が慣れていないだけなのかもしれない。

 逆に言えば、体が慣れてしまえば一気に暴れ回るかもしれない。


 答えは、わからない。


 サンタクロースが相手にしているのは、単なる災害じゃない。生き物だ。

 とてつもない巨大な災害を引き起こす、とんでもない生き物。

 生き物が決まり決まった行動を取らない様に、サンタクロースの仕事にも決まり決まった手順はない。


 だから、どうしたら良いかは最後に自分が決めるしかない。

 マスターランクともなれば、なおさら。


 色々と覚悟を決めた俺は、深々と、それはもう深々と深いため息を吐いて、エリーゼと向き直った。


「……正直、TONAKYトナカイだけじゃキツイ。せめてSOLIソリは使いたい。できれば応援に、二人か三人ほどマスターランクに来て欲しいんだが?」


「それを判断する為にも、一戦交えて見てください。ゾスさんがここで対処できなければ、このままオーダーランクに格上げして報告します。一応、避難勧告は出して既に住民の避難は完了していますし、多少の被害は承知の上です」


「多少の被害は承知の上って、俺らが言うべきセリフじゃないだろ」


 俺はエリーゼにそう吐き捨てると、諦めて肩をすくめた。

 全く、枝葉の手際はいいくせに、なんで根本のところで問題を起こすんだよ。


 そう思いつつ、漁師のジジイやエリーゼから少し離れると、適当な広さのある土地の中心に立ち、両拳を勢いよく叩きつけて軽く気合を入れる。


 そうして、気合を入れた俺は、思い切り指笛を吹いた。

 すると、その指笛の音が消えるかどうかといった瞬間に、俺の背後に巨大な一体の白い鉄の人形が現れた。


 技術作戦指示人工活動システム。

 通称、『TONAKYトナカイ』その中でも、『白銀の姫騎士』と謳われた世紀の大名作、ルドルフ社製第一量産型主力戦闘システム。


「いくぜ、ホワイト・スノウ・ナンバーナイン。楽しい楽しいお仕事だ。五分で殺して終わらせよう」


 俺の言葉と共に、白銀の巨影が蠢いた。






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