第2話 サンタクロースのお仕事。
「そもそも、ガンテッダ様は勘違いをなされております。確かに、巨大災害生物であるノグシーの対処を行うのは、我々サンタクロースの仕事ですが、それらは大きく五つの職分に分かれています」
そう言ってエリーゼは、手首にセットしたホログラム投影式線電子端末を操作して、空中に絵図を投影する。
そこには五種類のサンタと、その職分が一枚のページに収められていた。
巨大災害生物であるノグシーの被害を受けた人々を救出する、レッドサンタ。
巨大災害生物であるノグシーの被害を受けた人々の医療を行う、ホワイトサンタ。
巨大災害生物であるノグシーの被害を受けた街を復旧する、グリーンサンタ。
巨大災害生物であるノグシーの調査を担当する、ゴールドサンタ。
そして、巨大災害生物ノグシーの討伐を担当するブラックサンタ。
俺はブラックサンタとして主にノグシーの討伐を担当する仕事をしている。
そして、今回俺が受けた依頼は、港町を占拠する巨大なイカを排除してくれ。と言うものであった。
確かに、これだけならば、ブラックサンタの仕事として俺が引き受けるのが当然だ。
だが。
「サンタにも数があるのは分かった。分かったからとっととあのイカを退治してくれ!サンタがヨンタでもロクタでも俺らに関係ねぇだろうが!?」
エリーゼの話話を聞こうともせず、漁師のジジイは同じことを何度も繰り返す。
そんな漁師のジジイの様子に、俺は思わず肩をすくめた。
やれやれしょうがねぇ。ここは、ブラックサンタのマスターランクたる俺の役目だな。
「やかましいわ!!いい加減にしろよジジイ!!出来ねぇもんは出来ねぇんだよ!!ぶっ殺されてぇか!」
俺が声を荒らげた瞬間、俺の肝臓を撃ち抜く鋭いボディブローがかまされた。
思わず地面に這いつくばった俺は、ボディブローをかましたエリーゼを見上げた。
すると目線の先には、冷たい殺意を両目にたぎらせたエリーゼが、両目だけで俺に語りかけていた。
はい。黙ってます。横槍入れて申し訳ありませんでした。
「確かに、我々ブラックサンタは巨大災害級生物ノグシーを討伐する事を目的とした職業です。しかし、全てのサンタクロースは大きく三つのランクに分かれています。サンタクロースの中でも下位の階級に属するサーヴァントランク、次に主力級のマスターランク、最後に国家レベルの事案にも対処するオーダーランクです」
「はぁ!?何言ってんだ、サバだかマスだか知らねぇが、あいつを片付けてくれんだろうがよ?」
このジジイ、さっきから小粋なジョークを挟みがら文句を言うのなんなん?
一方でエリーゼは、そんな様子の漁師のジジイに頭を下げながら、新たな電子書類を空中に投影しつつサンタクロースの仕組みについて説明を続ける。
それはサンタクロースの階級についてだ。
サンタクロースの階級は、大きく分けて三つに分かれるのは先に言った。
この階級は、災害度数と呼ばれる数値に従ってランク付けされたノグシーのランクにどの程度対応できるか?の目安でもある。
つまり、サンタクロースの階級が高ければ高いほど、災害度数の高いノグシーを相手にすることができる訳である。
サンタクロースの中でも最低ランクに当たるサーヴァントランク。
これはおおよそ、災害度数1.1~3.0前後のグノシーやその被害に対応できるランクであり、基本的にはサンタクロースの仕事はこのランク帯に集中している。
次にマスターランク。
これはおおよそ、災害度数3.1~5.0前後のノグシーやその被害に対応できるランクであり、よく最低でもサーヴァントランク10人分の仕事だと言われる。
最後に、オーダーランク。
これは5.1~7.0以上。このランク帯が対応するレベルの依頼となると、もはや国家規模の災害として対応しなければならない。
実際にはそこから更に細かい階級に分かれるのだが、基本的にはこの三つの階級がサンタクロースのランク分けになる。
軍隊で例えると、サーヴァントランクは兵士、マスターランクは大佐、オーダーランクは将軍くらいの地位になるだろうか。
「ここまで説明申し上げればご理解していただけるかもしれませんが、今回この町の港を占拠しているノグシーは、ガンテッダ様がご依頼されたサーヴァントランクでは対処不能の事例となります。申し訳ありませんが、下手に刺激を与えれば、この港町そのものが消えかねない事態となります」
そこまで説明されて、漁師のジジイも色々と納得したのだろう。
素人から見れば、デカくてヤバそうな生き物は全部一概にサンタクロースに任しときゃ良いって考えだったんだろうが、そこまで単純な話じゃないんだわ。
俺の簡単な見積もりで見ても、今目の前にいるデカい巻き貝類イカは、災害度数5.5。
マスターランクであってもギリギリで対応できるかどうか。
下手すると、普通に国家レベルの危機と言ったレベルの依頼になる。
多分まだ死人が出てないから通ったのだろうが、それでもこのレベルのノグシーが、よくまぁサーヴァントランクとして依頼申請が通ったのが不思議に思うよ。
そしてそれは漁師のジジイも同様だったらしい。
「だがよぉ、そりゃ理屈が通らねぇだろ!俺はちゃんとお前さんらに話を通したぞ!そしたらサバだのなんだの言われて、申請したらお前さんらが来たんだろうが!それを今更できませんだの、お国の危機だのと言われても、納得できる訳ねぇよ!」
「そうですね。確かにその点に関して、私どもも落ち度があったとは思います。また、このまま何もせずに帰るのも、サンタクロースとして認められる訳ではありません」
ん?あれ?今、もしかして風向き変わった?
「幸いながら、今回はこの場での対応自体は可能です。勿論、報酬についてはこちら側で対応します。なので、一先ずは我々に今回の一件をお任せください」
おいおいおいおいおいおい。何言ってんだよ、上司様。
胸を張ってえっへんじゃねぇんだよ。漁師のジジイも「大丈夫かぁ?」とか聞いてじゃねぇ!大丈夫な訳ねぇだろ!
「問題ありません。何故ならば、ここにいるゾス・クリストロウは、実力だけはマスターランクになります。今回の件に関しまして、一人でも対応可能な貴重な戦力となります。今回はまず我々だけであのノグシーに対処してみましょう!」
エリーゼとのその紹介に、俺は思わず目を点にした。
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