第6話 そして輝く、ウルトラソード!
クソったらぁが。なんだよこの状況は!
巨大イカが巨大ロボットに向けて触手を伸ばして精液を発射しまくるとか、ドラゴンカーセックス並みに特殊性癖だぞ!
しかし俺のその叫びに、わざわざ答えてくれるはずもなく、襲い掛かる触腕と発射される精子の数だけが増えるのみだ。
……これは多分、ヤバいな。
『警告!射撃装備の残弾数が0になります。ターゲットのバイタルサインに変化があります。戦闘開始時より、触腕の数が増えています』
俺は警告音と共に脳内に響いたその電子音声に舌打ちすると、必要もなく声を荒らげた。
「レールガンを捨てろ!それと、仕込み剣を今すぐ使え!精液は直接手で叩き落とせ!」
俺の指示を聞くいや否や、ナンバーナインは左手のレールガンを捨てると、電子音声がすぐさま応答した。
『射撃装備「RC345電磁砲エルダードラゴン」を放棄します。射撃装備の放棄に伴い、近接戦闘態勢への緊急移行を行います』
心なしか苛立ったようにも聞こえるナンバーナインの電子音声に、俺も思わずイラつき声で返す。
「分かってらあ!流石に調子乗りすぎた!後先考える必要はねぇ!とにかく残存装備でこのまま急所をぶち抜くぞ!」
『戦闘指示、確認しました。戦闘出力を増加し、近接戦闘に移行します』
その電子音星と同時に、ナンバーナインは両腕に仕込んでいたブレード装備を展開させた。
『右腕部、ストームスライサー展開。左腕部、クレセントムーンライト展開。近接戦闘形態に緊急移行しました』
電子音声がそう無機質に答えると共に、ナンバーナインの両腕にはそれぞれ輝く光の刃と、風を纏わせる剣が展開する。
風を纏わせる剣は、
光の刃は、
ナンバーナインは、両腕に風と光を備えた剣を展開すると、迫り来る精子の弾丸と触腕をたちまちの内に切り刻む。
当然、巻き貝イカもそれに負けじと触腕やら精子やらを急速に再生してくるが、ナンバーナインは、その再生速度を上回る速さで巻き貝イカの攻撃を切り刻む。
すると、どうやらここに来て巻き貝イカの攻撃が激しさを増し、触腕の攻撃と射精の数と勢いが激しさを増した。
……まさか、本当にナンバーナインに発情したとか、そういう話じゃねえよな?
いや。恐らくは、単に射撃武器で攻撃されるよりも、身体中を切り刻まれることの方がこのイカにとって強いダメージだったのだろう。
これはいわゆる、最期の抵抗ってやつだろう。そうであってほしいなぁ……。
まぁどっちであってもやる事は変わりない。今までの避けるだけだったナンバーナインを操り、俺は迫り来る触腕や打ち出された精子を叩き落としていく。
ああ嫌だなぁ。精液を切り刻みながら戦う仕事とか、すごく嫌だ。
何が悲しくて、AV男優もしないようなマニアックすぎる分野を開発しているんだ俺は。
っていうか、イカの精子をぶっかけられるA Vとか存在しないからな?危なくて!
このやり場の無い怒りを俺は腹に溜め込みながら、ナンバーナインに指示を飛ばした。
「ナンバーナイン!全速力だ!とにかく全速力でイカの正面に両剣を突き立てろ!そうすりゃ、それで決着する筈だ」
『了解しました。ターゲット、ロックオン。
その言葉と共に、ナンバーナインは巻き貝イカから一度距離を取ると、両腕の剣先を重ねる構えをとる。
そうして、ほんの一秒ほど照準を合わせると、巻き貝イカの急所に向けて音速を超える速度で突っ込んだ。
細かい事を考えず、直線だけなら流石の巻き貝イカも反応できない速度で動ける。
左の光剣と、右の嵐剣。
二つの剣が音速を超えて巨大な巻き貝イカの急所に突き立てられ、一瞬その行動が止まる。
そして次の瞬間に、今まで生き物として生々しい色彩を保っていた触腕が一瞬の内に白に変わり、触腕の群れが力無く海面を叩いていく。
『バイタルアナライズ確認。ターゲットのバイタルサインは停止ししています。生態機能の完全停止を確認しました』
「そうか。一応、念のために様子見に入ろう。悪いが姫さま、今日一日はこのまま監視態勢に入ってくれ。少しでも生体反応に変化があれば報告してくれ。それと、一応のとこは、お疲れさん」
俺からの指示を聞いたナンバーナインは、両腕の装備の稼働を停止させると、無機質な電子音声を再び鳴らした。
『戦闘指示、確認。ただいまより、戦闘態勢を解除して監視体制に移行します。バイタルアナライズ確認中』
俺の労いに反応を示す事なく、戦闘前の状態に戻ったナンバーナインは、空中に停止したまま、死体となった巻き貝イカを見つけ続けた。
本当にお疲れ。何事もなければ、後て来たサンタクロースがなんとかするだろう。
ま、そこそこ大変だったし、報酬は期待できるのが唯一の救いか。
☆☆☆☆☆
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