D××/復活祭からXXXIII日後 アーサー王宮廷の小部屋
厨房の前を横切ったアグラヴェインは、延々と続く廊下を歩き切り、ついに一番奥の部屋に到着した。周りに他の騎士がいないことを確認し、音を抑えてドアを開ける。そこには三人の兄弟たちがいたが、その表情はどこか重く、不吉な報告が待ち受けていることは明白だった。
「ガレスはどうした」
「声を掛けていない。巻き込んでも仕方がないと、兄さんが判断したからね」
三男の問いに答えた次男・ガへリスは、床を擦らせて椅子を引くと、遅れてきた彼を座らせた。異父兄弟で末子のモードレッドは、短剣を弄んで暇そうにしていたが、長男のガウェインが片手を上げたのを見て、ようやく視線を上へ上げた。
「揃ったな、兄弟たち。急な呼び出しですまない」
金色に輝く髪に、溶けるような桃色の瞳。ガウェインの端整な容姿は、この重苦しい空間にはあまり似つかわしくなかった。
「今日この場に集まってもらったのは、他でもない。この間の馬上槍試合に参加した、あの騎士に関することだ」
やはりと言いたげな雰囲気が、小さな部屋を覆いつくす。アグラヴェインにもガへリスにも、そしてモードレッドにも、長男が言わんとしていることが一瞬で理解できた。
「……あいつには、相当な借りがある。やり返す機会さえあれば、それだけで十分だ」
モードレッドは苛立たしげに顔を歪めると、短剣を宙に放り投げ、器用に左手の中で回し始めた。先日の馬上槍試合では、話題の騎士のせいでひどい落馬を経験した。しかしそれは、他の騎士も同じことだった。実はモードレッド以外にとって、問題はその程度のことではなく、さらに深いところに存在していた。
「モードレッドの言う通り、心の準備はすでにできているよ。何せあの騎士は、俺たちに恨まれることばかりしているからね」
ガへリスも末子の言葉に賛同し、怒りを抑えるような表情をした。今回の件で最も腹を立てているのは、他でもない彼だった。
「我々に恨まれるだけではない。あいつも我々を恨んでいるのだ。我々はロット王の息子で、あいつの父を殺した張本人だからな」
アグラヴェインは怒りを見せることなく、あくまで冷静を装っている。しかし腹の内はどうであるかは、決して誰にも分からなかった。
「ああ、そうだ。やつの父であるぺリノア王を殺したのは俺だ。だが、それもそうだろう。ぺリノア王は我々の父を殺したのだから、やられるのも当然ということだ」
ガウェインは己の殺人をはっきり言い切ったが、この場で彼の罪を非難する者など、もはや一人もいなかった。兄の行動を黙認している時点で、彼らも皆共犯なのだ。
「兄さんは何も悪くない。これは然るべき報復だ。なのにあいつは自分の父を殺されたことを恨んで、今度は俺たちの母さんに付け込み始めた」
ガへリスが根幹に言及すると、ガウェインは途端に機嫌が悪くなった。ぺリノア王の実の息子が、彼の母であるモルゴースを愛しているという事実。それはロット王の息子にとって、そして彼自身にとって、不愉快以外の何物でもなかった。
「いいか、おまえたち。俺はやつに復讐しなければ気が済まない。今はじっとしているが、いずれ機会が来たら、必ず陥れてやるからな」
ガウェインが忌々しげにそう言うと、他の三人も小さく頷いた。彼らの復讐心は次第に募り、更け切った夜のように暗くなっていった。
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