第5話
夢を見た後の朝は、現実がモノクロに見えるから苦手だ。
目を閉じた時に見ていた景色は、可視光には無い彩りとコントラストに溢れている。
僕は目を閉じて、膝の上でビートを刻む。日課となっている僕なりのヨガで、アナログだった体内時計を強引にデジタルに切り替える。
リビングでは兄が先に朝食を食べていた。
僕が吹奏楽部へ入ったのは、音楽への造詣が深い兄の影響だ。
そんな兄とはよく、音楽についての話をする。
「そういえば昨日、パーカスに新一年生が居たんだよ。しかも男子」
「おお、男子は珍しいね。どんな子だった」
一瞬だけ返答に窮し、「昨日はそんなに話してない」と言った。実際に、交わした言葉は挨拶のみだった。
「ただ、ドラムが凄い巧かった」
「おお、じゃあ健二のライバルになるな」
ライバル、という響きに少し違和感を覚えた。その理由は、ドラムの腕が彼に見合わないという単純なものではなかった。
僕は兄に曖昧な微笑を浮かべた。
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