第3話 来院幼女
聖ノエラ大学附属病院。 この辺では有名な私立大学の附属病院。聖ノエラ大学は医療特化型の病院であり、医学部、薬学部、看護学部、 歯学部、リハビリテーション学部の他にも獣医学部もある。
最新鋭の設備が揃い、先進医療も行っているA県内でも有数の大病院である。
自宅から自転車を漕いで15分の場所にあるのでなにかあればここにお世話になっている。
さてと・・・
ちらりと羽織ちゃんを見るが彼女は能天気に鼻歌を歌っている。うーん・・・どうなんだ?ここから来たのか彼女は?
「羽織ちゃん、どう?ここかな?」
「んー?さぁ?」
「さぁ、って・・・」
「だって出てきたの夜中だったしー外面とかよく見てないよ。」
「え?・・・」
外面を見ていない。つまり、彼女は外からその場所を見たことがないということだろう・・・ずっとその中に住んでいたのかな、外に出ることもせずに。
いろいろと考えてしまうけれど、もしも病気だったら病院に帰した方がいい、よね。
羽織ちゃんの手を握って病院のロビーへ向かう。
受付の若いお姉さんがいたので「すみません、」と声をかけると「どうされましたか?」と返される。
「あの、この子うちに迷い込んできた子で・・・それで、話を聞いてるとどうも病院から来たのかなぁって思ってー・・・。」
「左様でございますか、承知いたしました。離院の報告はこちらには届いていませんが、入院病棟へ問い合わせ行いますので少々お待ちください。」
やたら胸が大きく、シャツが開いている受付のお姉さん(病院的にどうなのこれ?!)をあまり凝視するのも恥ずかしくなってしまったので目を背け、待合ロビーを見た。
この病院はいつも混んでいるなぁなんて思いながら問い合わせの結果を待った。
そんなときふと、患者さんの話し声が耳に入る。
「最近さぁ、この辺も物騒よねぇ。」
「あぁ、例の?」
「そうそう!神隠し。」
「怖いわよねぇ・・・事件にもなっていないあたりが怖いわ。この前三好さんとこの娘さんもいなくなったとか!」
「あらぁ〜」
・・・なんのこともない、ただの噂話だ。俺も、その噂は聞いたことはある。最近この古織町で人がよくいなくなるという。古織町には昔は神様が住む町なんて言われていた事もあってなにかあれば神隠し、なんて言われたりもする。・・・そんなに田舎というわけでもないんだけれどなぁ。
「・・・したよ?」
「へ?!」
「問い合わせ終わりましたよ。」
受付のお姉さんに声をかけられ不審に飛び上がってしまった。別に胸の谷間なんて見てないです!!!って言葉が出かかったがその言葉はちゃんと飲み込みました。
「入院病棟各階に連絡したのですが、離院されている患者様はいらっしゃいませんでした。」
「そうですか、お手数おかけしてすみません。」
「いえ、あの・・・それで、件の女の子はどちらへ?」
「へ?・・・ここに、」
と、横を見ると羽織ちゃんの姿が見えない。・・・おや?
ま・・・迷子?!というかここの病院の食べ物も食べ尽くす可能性だってある!!!それはやばい!だって俺が連れてきた幼女が問題起こしたとしたら、当然連れてきた俺にどこの学生か聞かれて聖ノエラの学生だと分かったら内申点とか諸々下がってしまう!!!そうすれば聖ノエラ大の内部推薦も絶望的だ・・・。
「あぁあぁあの!!探してきます!すみません!!!」
顔面蒼白なりながら俺は病院内で羽織ちゃんを捜索することになった。
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