第14話 甥と叔父

 エイバン家の庭を気晴らしに散歩しないかとレイナードに誘われて、フェルナンドは庭を散策し始めた。美しい庭には人間の庭師とゴーレムが花々や植木の手入れをしている。


 だが、そこもうっかり迷うととんでもない事になるのだ。そうこの家の庭には赤い霧の様な靄がかかっていて、それに触ると何処かに連れて行かれる。防犯対策に家主が放った魔物だった。屋敷の住人は認識しているが、客人は認識対象外なのだ。庭を自由に歩き回る事は出来なくなっている。


 それは屋敷の中でも同じこと。屋敷の中の扉はいくつもあるが、普通と違うのはその扉が目的の部屋になるとは限らない。屋敷の者達が盗みを働こうとしても宝物庫には辿り着けないし、そんな者は屋敷から手酷い目に遭わされて、警備隊の詰所に#捨てられる__・・・・・__#のだ。そう自動で縄を掛けられ、罪状を音声魔法で叫ばれながら。偶に後から紙に書いて空から降って来ることもあるらしい。


 そんな屋敷の庭は「春夏秋冬」の四つの区間に分かれていて、それぞれが別の空間になっている。例えば冬の庭は年中雪が降っていて、秋の庭は紅葉が真っ盛り、夏の庭は暑くて青々と緑が生い茂っている。春の庭はどうやら子供の遊び場の様で、小高い丘では、侍女と一緒に小さな男の子がブランコに乗って遊んでいる。そのすぐ傍には秘密基地の様な樫の木が立っていて、その大きな枝には鳥籠の様に小さな家がぶら下がっているのだ。


 「おじしゃま──っ」


 小さな男の子が命一杯手を振ってかけて来た。途中で焦り過ぎたのか、丘から転げ落ちてしまった。慌てて侍女が駆け寄ると、すくりと立ち上がって大きな目に涙を溜めながら、泣くのを我慢していた。レイナードは甥っ子を抱き上げると


 「えらいぞ!ジェイル。もうすぐお兄ちゃんになるのだから強くならないとな。妹や弟を守れるように」


 そう言って男の子を励ましていた。男の子はジェダイドの嫡男で将来、魔塔の主になるのだ。フェルナンドから見てもかなりの魔力を持っている。将来有望な魔法使いになるだろうと思っていた。


 フェルナンドには分からない家族の絆の様な風景がそこには広がっていた。レイナードは直ぐに甥っ子を侍女に任せるとまたフェルナンドの方に戻って来た。


 気を遣わせている事にフェルナンドは居心地の悪さを感じたが、レイナード気にしないようにと言わんばかりに先に進んだ。


 そして温室の扉を開くと、そこは魔塔のジェダイドの部屋に繋がっていた。レイナードが声を掛けるより先にジェダイドの方が予期せぬ来客に気付いたのである。


 ジェダイドの手に#例の__・・__#指輪があるのをフェルナンドは見たのである。数日、自宅に帰れなった理由はその指輪にある様だ。

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