第12話 百匹狩りのブレーズ


 大岩を投げて来ていたルーガルーの下にたどり着く三人。そこには血まみれの大男の姿があった。


「ひでぇ食い散らかし方だ」

「もう住人はいないみたいっすね……」


 大男は無言でこちらを見やる。そして虚空から大岩を出現させる。


「奴め……命のストックを大岩に変えてやがる」

めろ、撃つぞ。めなくても、撃つ」

「むーっ!」

「その前にセシルのさるぐつわ外してやれ」


 仕方なくせっせとセシルのさるぐつわを外すブレーズ。ダミアンがその間、大岩を防いだ。さらっと人間を辞めている。そんなダミアンをさておきジャポネーゼネ〇コスタイルから解き放たれたセシルは一言。


「そうだそうだ!」


 と言った。


「いや、それだけか!?」

「アハハッ! 最高だ部下よ!」


 仕方なく、特攻弾を撃ち放つブレーズ。しかし、大岩に防がれる。


「邪魔だなあの岩! モザイク並に邪魔!」

「おいナンパ野郎、現場でセクハラとは良い度胸だな?」

「えっ、課長、そういう耐性無い感じでした?」

「セシルもいんだぞ! ってそうじゃねぇよ私も女だっつの!」

「一応、そうですね」

「セシルちゃん!?」


 また漫才が挟まったが関係無い。また大男が大岩を振り回す。


「あれなんとかしてくれセシル!」

「了解ですセクハラ先輩! 邪魔なモザイクは私が取りましょう!」

「セシルさん!?」

「アハハ! グッジョブ、セシル!」


 大男と取っ組み合いになるセシル。大岩は虚空に消える。その間隙かんげきを縫う。特攻課開発部門特製ライフル銃。狙いは完璧。セシルと大男の攻防のその隙間。心臓に狙いを定める。そして、引き金を引いた。

 その一撃は見事心臓を貫いた。そしてドゥという数字を残して消える大男。そんな事は初めての経験だった。しかし、驚いていない者が一人。


「第二番の眷属だったんだ」

「課長、何か知ってるんですか?」

「ああ、人外獣理ラ・ベートどもは眷属を作れる。セシルにもそうしようとしたろ? 失敗したが」

「じゃあ今のが成功例?」

「ああ、そうだ。そんで全部殺せば」

「本体が出て来る!」


 セシルが嬉しそうに声を上げた。それを撫でてやるダミアン。ブレーズはそんな二人を見守りながら。


「じゃあ第一再開発地区に集まってんのは」

「第二番の復活を目指す眷属の集団だろうね」

「なおさら叩くしか無いっすね」

「元からそうだろ」

「燃えてきました! 燃え燃えです!」

「その後、きゅんって言って」

「急になんです課長」


 若干、引き気味のセシル。


「いいからいいから」

「燃え燃えきゅん……」

「よっしゃやるぞー!」

「なんなんだったですか今の!?」

「落ち着けセシル。課長は前からああだ」


 諦めたように三人は第一再開発地区内部へと突入する。

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