第11話 匂いで分かるんだよ


「またルーガルー狩りですか課長、どうやってまだ被害が判明していないルーガルーが分かるんですか?」


 ブレーズが心底、不思議そうに首をかしげる。ダミアンは不敵に笑って。


「匂いで分かるんだよ、そういうチキン野郎は。いい匂いがする。殺しがいのありそうないい匂いがな」

「なんか、どっちが獣かわっかんないっすね」

「アハハッ! どっちも獣さ! 人間も、ルーガルーもな。私はさぁ、強いやつだけ生き残ればいいと思ってる。正直な?」

「なんでか聞いても?」

「そりゃもちろん、もうすぐ戦争が起こるからさ」


 ちなみにセシルはというと飢餓衝動きがしょうどうを抑えるため、さるぐつわをさせられている。ジャポネーゼネ〇コスタイルである。


「むふーっ」


 と威嚇しているのがセシルである。

 閑話休題。


「戦争? そんなきな臭い話聞いた覚えありませんね」

「近々起こるよ、大戦争が、世界をひっくり返しちまうようなさ」

「……なんかますます胡散臭うさんくさい。変な都市伝説サイトでも見ました?」

「いんや、そういうんじゃない。匂いがすんのさ」

「また匂いっすか」


 なんだかはぐらかしているような、真実を語っているような、いまいち正体がつかめない。それがダミアンという人物だった。

 そして、この特攻課第二支部の端くれに伝令が入る。


「大変です! 第一再開発地区に十数体のルーガルーが! 第一支部から応援要請です!」

「十数体!? 奴ら群れないんじゃなかったのか!?」

「来たろ……でっかい戦いの匂いだ!」


 革ジャンを羽織り、飛び出すダミアン。後を追うブレーズとセシル。第一再開発地区まではだいぶある。車で三十分ほどかかってしまう。しかし。先に出たダミアンよりセシルが先行する。半獣の膂力りょりょく。そのスピードは車をも追い抜く。


「ああもうあいつ!」

「ヘイタクシー!」


 タクシーを止めて特攻課である事を告げて、スピード違反を許可して即行で現場へと向かう。セシルと並走するタクシー。タクシーの運転手さんは運転に集中してその存在に気が付いていない。もしくは信じたくないので見ていない。


「おい! あんまり無茶すんなセシル!」

「むぅー!」


 さらに加速する半獣。その途中で。辺りが暗くなった。


「なん――」


 だ、と言う暇も無かった。それは巨大な落石。いやだった。投岩とうがんとでも言おうか。それは石というより岩のレベルで巨大だった。


「む!」


 タクシーの運転手さんの神テクニックで見事に躱すも、二撃目が来る。それを真正面から捉えたセシルが飛び上がる。拳を振り切る。一撃。砕いてみせた。

 しかし、三撃目、四撃目とくる。捌ききれるか――


「課長、俺達も出ましょう」

「んー、任せてもいい気がするけど、OK」


 まだ走っているタクシーから飛び出す二人。どこからともなくロケットランチャーを取り出す。何でもありか。


「ショータイムだ! ヒャッハー!」

「そのノリついていけねっすわ……」


 二人は引き金を引いた。大岩目掛け弾頭が飛び出し、爆発する。

 さぁ、反撃の時間だ。

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