第8話 またもや息抜き


 二人は対第二番の捜査から外された。理由は。


「ちょっと頭冷やせ」


 というダミアンの鶴の一声だった。その時のダミアンは妙に機嫌が悪かった気がする。どこか身体をかばっていたような印象をセシルは受けた。怪我でもしたのだろうか? そんな疑念を持つ。二人はまたもや、前にカップル作戦の時に使ったカフェテラスへと来ていた。


「甘いカフェオレ」

「……お水を」


 各々、注文する。


「うん? どした、奢りだぞ?」

「いや、そうじゃなくて、呪いを受けてから味覚が変で」

「……そっか」


 二人で飲み物を啜る。相棒は一体どんな変貌を遂げてしまったのか、そう考えるとブレーズは少し物憂げになった。

 それを察したのかセシルが。


「そういえば課長の名前って男性名ですよね!」

「ガサツだからなぁ……親御さんの先見の明だろ」

「ひどい! けど当たってそう……」


 笑い合う二人、雰囲気も和んだところでブレーズが切り出した。それがマズかった。

 

「なんか食うか? 肉なら食えるんじゃないか?」

「お肉……先輩」

「うん?」

「先輩って美味しそうですよね……」

「ぶっ!?」


 ブレーズは思わずカフェオレを吹き出す。セシルの瞳孔が開いている。獣の眼だ。マズいベルナデットに教わった人化が解け始めている。ブレーズはセシルの手を引く。


「会計! ツリはいらねぇ! いくぞセシル」


 二人はカフェテラスを後にする。そして来たのは特攻課第二支部。そこの小さな演習場。ダミアンを巻き込む。


「先輩おねがいします! かじらせてください! 一口だけ!」

「なにこの修羅場、ウケる」

「ウケてる場合じゃないよ馬鹿課長! いいからこいつをアベル達のところに!」


 あの二人なら、なんとかしてくれる。ブレーズはすがりつく思いだった。しかし。


「あー、あの二人でも飢餓衝動きがしょうどうは抑えられないと思うぞ?」

「は!?」


 それでは手詰まりではないか。ブレーズは頭を抱える。じゃあどうすればいい? 目の前でこちらに襲い掛からんとするセシルを見つめる。助けを求めるようにダミアンに視線を移す。


「戦えよブレーズ。欲求を満たしてやれ」

「なにを言って――」

「ルーガルーは特攻弾以外じゃ簡単に死なねえ。だから戦って飢餓衝動きがしょうどうを抑え込め」

「どういう理屈だ!?」

「いいからやれオラ」


 ナイフを投げてくるダミアン。ブレーズはそれをキャッチする刃が無い、摸擬刀だ。これで戦えと言うのか。ブレーズは思考放棄に近い極地へ至る。


「先輩! 一口だけでいいんです!」

「あーもう、こういうの俺のキャラじゃねーんだけどなっ!」


 セシルの牙を摸擬ナイフで受け止める。すごい力だった。押し負けそうになる。しかし踏ん張る。人間だって負けていないと。示さなければ。

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