第7話 人外獣理
夜の再開発地区。再び潜入する二人。耳をすます。音が聞こえる。たったったっ。誰かの走る音。小気味いい音の後に、不気味な思い音が響く。また誰かが追いかけられている。
「んじゃまあ、行きますか」
「先輩、なんでこの件やる気なんですか?」
「お前の件もあるけど……世の中からお姉さんが減るなんて世界の損失だからな」
「はぁ……先輩は先輩でしたとさ」
「なんだとう」
「ほら行きますよ」
「あっおい! 速いんだよお前!」
半獣と化したセシルの身体能力は各段に上昇している。常人のそれとは比べ物にならない程に。ブレーズは追いつくのでやっとだ。あっという間に不気味な音の発生源へとたどり着く。三メートルを超える巨躯。夜な夜な人を襲う怪物。
『知っているかなり損ない』
「……」
『我らルーガルーはこと夜においては無敵である』
「だから、どうした化け物。おら特攻弾のプレゼントだ。おねんねしな」
サブマシンガンを連射するブレーズ。しかし意に介さない
『効かぬな、そんな豆鉄砲ではな』
「じゃあこれはどうです?
力の奔流に飲み込まれる
『まさか……まさかだ……そうか……お前らには第一番殺しが居たな!」
力の奔流を、力で振りほどく巨躯。それは絶望に近い行動だった。第零番なら勝てる。二人はそう思っていた。
『次はこちらの番だ。お見せしよう――潰せ、潰せ、潰せ。生を害する事を禁ずる戒めよ。死を受け入れない逃避よ。全て、無意味であると知れ。――お前は何を望む? 七人の獣王よ、私は力を望みます。全てを
世界が岩山に一変する。逃げ場を封じられた。第二番の巨躯が迫る。ありったけの弾丸を放つブレーズ。効くわけもない。すぐさま高周波ブレードを取り出す。
「接近戦なんて無茶です! それなら私が!」
「いいから下がってろ……」
じりじりと距離を詰める一人と一体。
『人間風情に止められると思うなよ。此処は我がテクスチャ。我が法なり』
「何がテクスチャだ。舐めやがって……!」
駆け出すブレーズ。腕を振るう第二番。それをかわし、またぐらへと潜り込む。そして隙を縫って腱を斬り付ける。獣といえど身体の構造は同じはずだ。
『まさか……!』
「本命は俺じゃない」
「てやーっ!」
セシルが拳を振り抜く。それは第二番の顎を捉える。
頭を揺らす。意識を刈り取る。ぐらりと揺れる巨躯。岩山のテクスチャが剥がれる。
逃げ場が出来る。しかし。
「もう一度、第零番を打ち込めぇ!!」
「了解です!!
力の奔流に飲み込まれ、第二番は姿を消す。終わった。二人はそう思った――
●
翌々日。
「事件だオラァ!」
「ダミアン課長、扉は――」
「夜な夜な再開発地区で人が襲われている」
「は? その事件なら解決しました……ってまさか」
「そのまさかだ。お前ら討ち損じたらしいな?」
あの脅威がまだ残っている。その事に。二人は恐怖した。
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