魔王とお嬢
きゃる
プロローグ
第0話 魔王とお嬢
「いよいよカチコミね」
「ああ、準備はいいか?」
「当たり前じゃない。一国の王族ごときに、今のあたしがビビると思う?」
「違いねえ」
彼は人外――魔界の王で、いわゆる魔王。
長い黒髪に想像を絶する
なんてもったいない……っていうのは、あたしのただの感想だ。
対するあたしは人間で、か弱い女性――まあ、見てくれだけはね。
毛先にウェーブのかかった紺色の髪は
そんなあたしは恵まれた容姿を持ちながら、転生して貴族の家に生まれちまったばかりに理不尽な目に遭ってきた。 そんな自分が
「だからって簡単に許してあげるほど、あたしは甘くはないんだよ」
「知ってる」
ボソッと口にした途端、魔王が
彼とは時を超えた結びつき。深く知る相手だからこそ、いつでもどこでも頼もしい。
「じゃ、よろしくね」
「ああ。お嬢の望むままに」
魔王となった彼の低い声が、あたしの背中を
その響きには決まってモゾモゾするけれど、この感情に名前を付けるのは後でいい。
この日――。
ボンクラ王とボケナス王子、イキッた女が治める国は、きれいさっぱり無くなった。
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