第5話

 あれからしばらく経った現在、徹也達は昼食を食べ終わり配属先の発表が行われていた。生徒達が次々と才能にあった配属先が言い渡されていく。


「優愛殿は教会の方に行っていただきます。そこで、怪我人に治癒をお願いしたいのです。その教会には優愛殿と同じ才能を持つ者が多くいますので、その者達から説明を受けてください。案内は彼女に任せます」


「は、はい……。あ、あの、よろしくお願いします」


「ええ。よろしくお願いします」


 優愛がマディーが紹介した女性に挨拶をすると、女性も優愛に挨拶を返した。後マディーに声をかけられていないのは、戦闘系の才能を持つ者と、徹也、舞、治伽だけだ。


 するとマディーは、一人一人に声をかけることを止め、残った者全員に語りかけた。


「後の方々は、騎士団の方に行っていただきます」


「ちょ、ちょっと待ってください!私はまだ分かります!ですが生徒達が危険に晒されるのは――!」


「もちろん、危険がない訓練から始めます。しかし、才能の観点から騎士団に行ってもらうのが……」


「でも!才無佐君に小早川さん、望月さんは――!」


「……そのお三方については、こちらでは適所が分からないので、取り敢えずですが教師の刀夜殿と同じところで、と……」


 建前だと、徹也は思った。本当は使えないから騎士団に送り、暗殺や追放を企てるつもりだろう。


 そして、その危険があるのは徹也だけではない。舞、そして治伽にもその危険がある。徹也は、舞と治伽にこのことを伝えなければと思った。


「っ……!そう、ですか……」


 刀夜はマディーの言葉を聞いて、悔しそうにそう言い顔をうつむかせた。生徒の安全が本当に保証されているのか。刀夜はそんな疑問を抱く。まだ騎士団を見ていないので何も言えないが、刀夜はとてつもない不安に襲われた。だが同時に、自分が生徒を守らなければとも思い、刀夜は決意を新たにした。


「では、この後それぞれの配属場所に移動してもらいます。騎士団の方々はこの王城の中にある騎士団訓練場にて、訓練をしてもらいますので今から……そうですな。三十分後にここから移動します。それまでに準備を終わらせておいてください」


 マディーがそう言った後、騎士団以外の場所に行く生徒達は案内に従って移動を開始した。優愛も徹也達に手を振ってこの場所から出ていく。


「……ちょっといいか?」


 徹也は、優愛がこの場所から出ていったすぐ後に、舞と治伽に声をかけた。舞と治伽は徹也の真剣な表情に疑問を思いつつ、徹也の言葉に答える。


「う、うん……。いいけど……」


「……私も構わないわ」


「……ありがとう。じゃあ、こっちに来てくれ」


 徹也はそう言うと、舞と治伽を連れてこの場所から出ていった。

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