第19話 4人で行こう!
マイアとミミはリータに連れられ、哲学者のクランの代表の学長に会った。そこで哲学者のクランにあるものは使っても良いと了解を得た。そこで、保管庫に行き食料や道具類などを調達させてもらった。
「あとは着替えを持って来ないとね」
マイアとミミは一端魔女の森に帰って、数日後借りたランタンと着替えを持って再び哲学者のクランに現れた。地理学棟に向かう途中2人の良く知った人物が待っていた。
「レオ?」
「それにイライアス?」
マイアとミミが目を丸くする。
「どうしたの2人とも?」
「どうしたもこうしたも水臭いじゃないか」
2人の姿を認めレオが少し怒った顔をした。
「え……」
「2人で危険なところへ行くつもりだろう? 声を掛けてくれれば良かったのに」
「でも、忙しそうだったし……ねぇ」
マイアが困惑しつつミミの同意を得ようと横目に見る。
「はい。それに護衛の報酬だって払えませんし……」
「それが水臭いんだ。君達には恩義がある。報酬なんかなくても一緒に行くさ」
そう言ってレオがさわやかに微笑んだ。
悔しいけど、イケメンだわ。
ぐぬぬと、別に悔しがる必要もないのに何故が悔しがるマイア。
するとレオの姿を遠巻きに見ていた女性達からため息のような黄色い歓声のようなものが聞こえてきた。その瞬間レオの顔にうんざりしたものが過る。
黒い妖精を倒した後、レオは哲学者と騎士のクランを何度か行き来して来たが、ここへ来るといつもこんな感じになるのだった。
あれが噂のレオのファンクラブかー。
「あの人達は何してるんでしょう?」
ミミが首を傾げると、レオは不機嫌な口調で答える。
「俺がここへ来てからずっと遠巻きに監視しているんだ」
「監視、ですか……」
「多分、監視とはちょっと違うと思うけど。モテるわね、レオ」
マイアは揶揄うようにニヤニヤと笑う。
「顔しか見てないんだっ」
「そんなことは無いと思うけど……」
顔が良いのも大変なのかもね。もしかしたら何か嫌な思いでもしたことあるのかしら……。この前もあの魔女に言い寄られてたし。
思いっきり渋面になったレオを見てマイアが可笑しな事を提案する。
「そんなに顔のことが気になるなら、いっそ仮面でも着けてみたらどう?」
なんちゃって。アニメやゲームではそういうキャラたまにいるけど、例えばフィールドホッケーの試合で着けてやったら、視界は狭いし息苦しいし、それに蒸れるし。良いこと無いわ。
しかし、レオの顔はその手があった、みたいな表情になっている。
「いや、レオ。冗談よ、それ」
「おい、お前らいつまでしょうもないこと言ってるんだ」
すっかり放っておかれたイライアスが不機嫌に割り込んだ。
「なに2人でこそこそ出かける準備してるんだ」
何故か怒ったように言うイライアス。
「私達こそこそしてたっけ?」
「いえ、別に。旅に出ることは隠していませんし……」
マイアとミミが小声で事実を確認し合う。
「だーもう! お前ら2人だけで行ったって上手くいくはず無いだろっ」
どうやら声を掛けて欲しかったらしい。心配していると素直に言えないのがイライアスらしくマイアとミミが忍び笑いをすると、イライアスがぎろっと睨んだ。
「はは、ごめんごめん」
「イライアスが俺のところに来て、君達がどこかへ行くことを教えてくれたんだ」
「そうだったんですか……イライアス、ありがとう」
ミミが礼を言うとイライアスはぷいっと顔を背けた。照れたのだろうか。
「じゃ、4人で行こうか」
こうしてマイア達はまず地理学棟に向かい、以前会った女性から鉱山の地図を受け取った。
「以前いらした後に探しておきました。こちらは山の地形図、こちらは坑道の中の地図の写しになります。ただ、何分相当に古い物ですし、どこまで正確かは……」
「いえ、十分です。ありがとうございます」
マイア達は丁寧に礼を言い、その女性に魔法陣のある部屋へと案内してもらった。それに乗りグラナーティス鉱山にある小屋へ移動する。
小屋にはこの前準備しておいた食料や毛布やらロープやナイフなどの道具類が置いてあった。ここを拠点に鉱山の捜索を開始するのだ。
「まずは食料ですね」
「石を掘り出すならハンマーと鏨(たがね)が必要だな」
「方位磁石とナイフも持って行かないと」
ミミは斜め掛けの鞄、他はリュックサック型の鞄に荷物を詰めていく。準備が済んだところで、4人は外へ出た。小屋は開けた高原の中に建っていた。視界には雪を頂いた山の峰々が広がる。
「綺麗なところね」
何だかハイキングかトレッキングでもしたい気分だわ。
「そうですね。空気も澄んでいて気持ちがいいです」
ミミが思いっきり息を吸い、澄んだ空気を体に入れる。
「それでどっちに行けば良いんだっけ?」
ミミが地図を広げ、マイアが方位磁石を見る。
「南の方へ降りて行けば良いみたいです」
方位を確認しながら斜面を下っていく。徐々に木が増えてきて見通しが悪くなってきた。
「この辺りだと思うのですが……」
地図と実際の景色を見比べながらミミが言った。
「土に埋まっているのか?」
「何百年も前から使われていないなら、その可能性もありそうだ」
「そうなったら、掘り返さなきゃいけない感じ?」
3人はうーん、と微妙な顔になった。ミミが目を閉じて周囲の様子を探る。
坑道があるなら、それなりに深く長い穴があるはず。
「あっ……!」
ミミが突然走り出した。
「ちょっと、ミミどうしたの?」
3人は慌てて着いていく。ミミが立ち止まって見ている先に柵に囲まれた大きな穴があった。
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