【Greedy】

 皮肉とも嫌味ともつかない言葉を吐いた香苗は、運転席のドアハンドルに手をかける。


 その瞬間、海斗は後ろから強引に、香苗を強く抱きしめた。


 驚いて振りほどこうとする香苗に、海斗は抱いている腕に、更に力を込める。


 尚も逃げようともがく香苗に、更に覆いかぶさる。車の側部に両腕をつき、全身で押さえつけ、香苗の自由を奪う。


 こんな事をしている自分が情けなくなり、香苗の肩に顔をうずめながら、海斗は涙をこらえてつぶやく。


『ごめん』


「離して」


『傷つけて、ごめん』


「いいから離して」


『こんな事して、ごめん』


「解っているなら離してよ、痛いんだけど」


『行かないでくれ』


「そんな事、言うもんじゃな……っ」


 海斗は、香苗の顔を横を向かせ、唇を強く押し当てた。それ以上、否定の言葉は聞きたくないとばかりに、強引に舌を入れて香苗から言葉を奪う。


 香苗は口を閉じようとするが、既に暴れる海斗の舌にこたえないようにするのが精一杯だ。


 なまめかしい音を立てて香苗の唇を吸い続け、苦しくなった海斗は、荒い息遣いきづかいで唇を離す。その隙に香苗は抗議した。


「こんな事したって、どうにもならないでしょ…!?」


『もうどうしたらいいか、分かんねぇんだよ…!』


 今にも涙がこぼれそうな海斗は、香苗を抱く腕に、更に力が入る。そうしないと香苗が消えると思った。


 香苗に激しくキスをした海斗の股間は、意に反して大きく膨らんでいく。呼吸は更に荒くなる。


 少しずつ大きくなる、それを感じ取った香苗は、海斗から離れなくてはと、必死にもがく。しかし、デスクワークで筋力など無くなっている女性が、力仕事で筋肉質の男性に、力でかなうわけがない。


 それでも、少しでも抵抗せねばと、香苗は海斗に訴える。


「なんで、こんな、離してって言ってるでしょ!?」


『お前は、俺のものだ』


「何、考えてんの……?」


『俺の香苗……』


「やめ、こんな所で……っ」


 海斗はまた唇を激しく押し付ける。こたえないようにしていた香苗も、こたえざるをない程に、強く情熱的に。


 無駄な抵抗と悟りつつ、香苗は弱々しくもがいて抗うが、独占欲と性欲で理性を失っている海斗に思いが届くことは無い。


 香苗を押さえつける海斗は、その首筋に唇を押し付け強く吸い出し、いくつもの痕を付けた。


 自分の物だと。

 印をつけねばと。

 二度と離さないと。


 無数に痕をつけて気が済んだ海斗は、香苗の腰を抱えて持ち上げ、臀部でんぶを突き出させた。スカートの中身を香苗のひざまで、一気にずらす。力が入らない香苗は、拒否することもままならない。


 海斗も、自らのジーンズと下着を少しだけ脱ぎ、膨らみをあらわにした。根元を掴むと、熱を伝えようと香苗の臀部でんぶへと押し付ける。


 香苗の、その柔らかい肌を堪能していると、香苗がどんな表情をしているのかと見たくなり、覆うようにして覗き込んだ。


 弱々しく否定の言葉で抵抗するも、トロリとした目で恍惚こうこつの表情になりかけている香苗。


 海斗の横暴を受け入れるしか無いそこは、快感からか防衛反応からか、うっすらと湿り気を帯びている。


 更に正気を失い、欲を止めることもできず、最高潮に膨らんだ海斗の突起。弱々しい言葉とは裏腹に、濡れ続ける香苗の秘部。


 海斗は香苗に、深く、深く、突き刺した。


 〝こんな香苗の姿、誰かに見られてたまるか〟

 〝俺だけだ、誰にも悟らせてなるものか〟


 〝これは犯罪になってしまう〟

 〝愛しい人を、犯罪者にするわけにいかない〟


 前とは違う理由で、二人は声を出すことを抑えた。


 海斗はただ、香苗を独占する為に。

 香苗は、海斗を性犯罪者にしないように。


 海斗の指が、香苗の口に入り込む。香苗はそれを無意識に咥え、舐め回す。


 意識とは裏腹に、身体がそれぞれに、勝手に反応する。


 二人の吐息だけが漏れ、規則的に打ち付ける音だけが、辺りにかすかに響く。


 息が上がって途切れ途切れに、海斗が香苗の耳元でささやく。


『すきだよ』


「そんなこと、いっちゃ、だめ……!」


『言えよ』


「……すき…だ…けど…言わない…」


『やっと…言った...でも…俺のものになれないなら…いっそ…孕ませてやるよ…!』


「こんなの…!」


『しゃべるな……あ……くっ!』


「え…あ……!や…はなれて……!」


『ああ……!!』


 香苗の声を無視した海斗は、身体を起こし、更に激しく腰を振る。


 打ち付ける音が加速して響き、背中から頭に快感が走りかける時、海斗は香苗に、深く一突ひとつきした。


 押し付けたまま、海斗は痙攣けいれんする。その快感に、また数回、香苗を打ち付ける。不本意にも、その一方的な横暴に、香苗も痙攣けいれんしていた。


 脱力し、今にも倒れそうな香苗を海斗は抱きとめて支える。


 海斗は、香苗の唇を吸い、愛おしそうに舌を絡めた。それを受け入れざるを得ない香苗は、既に目がうつろになっている。


 周囲にかすかに響く二人の呼吸は、少しずつ静かになって行く。


 役目を終えた海斗のそれが、小さくなって香苗から外れ、艶かしい体液が、香苗の足を伝って垂れ落ちた。

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