10「癒し」
「なにコレ!かわいい~!」
「やっぱそうなるわよね」
「まあな」
友梨佳と初夜を迎えた次の朝、不思議なことが起きた。その久しぶりの刺激に俺たちは浮ついていた。
「にゃ?」
猫ちゃんかわいい。しかも子猫、まるでぬいぐるみみたいだ。
「こっち、こっちおいでー」
「……」
猫はふいっとそっぽを向いて揺れる草の方に行ってしまった。猫って犬と違って懐くってよりも慣れるって感じだよなぁ。それがまた咲にはよかったようだ。子猫を追い回してずっとニヤニヤしてる。
「うへへぇ~かぁわぁい~よぉ~」
「傍から見ると変態じゃねーか」
「うっさいわね。今が最高の時間なのっ!邪魔しないで!」
追い払われたぞ。まあ俺たちは散々子猫を愛でたからしばらく独り占めにさせてやろう。
三時間くらい咲に子猫を預けた。咲の家では猫を飼っているらしく家族全員猫好き。特に子猫はたまらなくかわいいらしい。
「しーっ」
「「…………」」
子猫は寝てしまった。咲は寝顔を見て顔を緩ませていたが、話をするため連れ出した。
「あの子猫について色々話し合おうと思うんだが……」
「名づけ親は譲れないわっ!いくつか候補を決めてあるのっ!」
「よっぽどお気に入りなのね」
「そりゃあもうっ!天使よ!天使!」
「わかった、わかった。名前な。とりあえず候補言ってみ?」
「マシュマロ、マカロン、ブリュレ……それにシュクルっ!」
「それって全部白いお菓子?」
「シュクルは砂糖だわっ!」
「「…………」」
「なによ!?」
「友梨佳はどれがいいと思う?」
「マカロン……お菓子……ものすごく食べたい……」
「マカロンでいい?それより友梨佳ヤバくない?」
「発作だな。とりあえず一旦話し合いは中断で」
俺たちは発作的に食べ物のことを思い出す。なにしろ半年間も同じ味の実を食べ続けてきたのだ、一度発作が始まると落ち着くまでに時間がかかる。とはいえ俺たちの場合ヤることは一つだ。咲から見えなくなったところで俺は抱きつかれて押し倒された。
戻ると咲は寝ているマカロンに癒されていた。さっきも見たがこんなに穏やかな表情の咲は初めて見る。俺たちと違って咲はほとんど一人だった。彼女にとってマカロンは必要な存在なのだろう。
「話の続き、いいか?」
「ええ」
話し合いは再開した。
「マカロンは普通の猫じゃないことは気が付いたか?」
「えっ?」
「おい、猫飼ってたんだろ?」
「呆れた」
「ど、どこがマカロンは変だってのよ!?あんなにかわいいのよ!?」
「肛門がないだろ」
「えっ?」
こいつかわいさしか見てなかったな。
「本当になかった……」
「マカロンは管理者に作られた存在ってことだ。食べ物も必要としないだろうな」
「心配なのはどういうつもりかいうこと」
「ここにきてこういうことは初めてだからな……」
本当にどういうつもりなのだろう。今のところペット以外の意図がない。このセカイに俺たちを連れてきた管理者の話は何度かする機会があった。今のところ咲も友梨佳も必要以上に不安じゃないようだ。
「ところでマカロンは生後どのくらいの大きさだ?」
「うちでネコ買ってたから分かるけどこの子は生後二、三か月ってところかしらね」
「やっぱりきっかけはセッ〇ス?」
「は?」
「……」
「あ~。一応説明して、事務的に」
俺たちが初夜を迎えたことを咲に説明した。
「他に思い当たるトリガーはないわね」
「ねぇ。もし次ヤッたらなにが起こるのかしら?」
友梨佳、セクハラ好きなんたんだよね。咲の顔が固まるのがいいらしい。この半年で俺たちも色々変わったなぁ。
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