作戦会議
第33話
――マクレイの工場、リン、シュウ、バロウの3人が中に入ってくる。
「おはよう、マクレイさん」
「おうおう来たかぃ、おはようさん」
にこやかにリンと挨拶を交わすと、全員テーブルを囲み席につき、バロウがリズと通信を繋ぐ。
「集まっているな、では作戦会議といこうか」
その場に少し緊張した空気が流れる。
「最近この間の様なクルークカンパニーの自作自演が増えていてね」
「バグによる事件をわざと起こし、それを自社のヒューマノイドで制圧する」
「世論を自分達に付けるための工作さ」
「かなり過激な活動をする抗議団体も増えているみたいだな」
「あぁ、だがこちらも、ブースターを違法と認め取り締まる準備がほぼほぼ整った」
「現在最終段階の調整に入っている、それが出来次第、宣戦布告できる」
「いよいよだな、こっちも全員体調不良もねぇし準備は出来てるぜ」
「宣戦布告は3日後の予定だ、宣言をしてから警官隊と共にクルークカンパニー本社に突入してもらう」
バロウとリズの会話を聞き、気を引き締めた様子のリンとシュウ。
「クルークカンパニー本社内部は警備ロボットが殆どだ」
「そこで、本社の電力部を攻撃しビルの電力供給を絶ちたい」
「ヒューマノイドは自立しているが、すべての電力を落とせば後続はいなくなるはずだ」
「確かに、指示を出しているコンピューター全てを落とせれば動きも鈍るはずだねぃ」
コクコク頷きながらマクレイがリズの話を聞いていた。
「警官隊がロボット達の相手をしている間にバロウ、君に電力部のハッキングを頼みたい」
「話は分かったが、あれだけでかい会社の電力丸々落とすとなると、結構時間がかかるぞ?」
「あぁ、だが同時に進行して素早く制圧しなければ」
「リンとシュウの2人には警官隊が出来る限りのバックアップをする」
「その間に例のジャンキー、ジョーカーとクイーンの無力化を頼む」
リズの言葉にリンとシュウは一気に緊張が高まる。
「ま、どの道あいつらの相手はしなきゃいけないしな」
「なんとかするしかねぇさ!」
「そうだね、今度こそ決着をつけないと」
2人の表情を確認すると、リズは手元のパネルを操作する、すると、大きなビルの映像が通信に映し出される。
「警察が調査したクルークカンパニー本社の内部構造だ」
「かなり大きなビルだが殆どはオフィス、内部の人間も事務員がいる程度でそれほど多くない」
「地下一階に電力部の制御室がある、ヒューマノイドが警備にいるだけでそこまで厳重ではないな」
「管理も仕事もヒューマノイドが殆どやっているのか、制圧するには好都合だな」
ビルの構造を確認しながらバロウが頷く。
「上層に大きなフロアが2つ、そして最上階にはゼンクルークのフロアがある」
「調査した結果、幹部はジョーカーとクイーンの二名で間違い無いようだ」
「それ以外の人員は特に見つかっていない」
「なるほど、なら存分にその2人に集中できるな」
シュウは腕をグルグル回しやる気を見せる。
「上層は複雑な構造になっていてね、一階ずつエレベーターを変えなければ上がれない用になってる」
「間違いなくそこで奴らが待ち構えているだろうな」
「大丈夫、最初から避けるつもりはありませんから」
リンの顔をみて、リズは少しほほ笑む。
「さて、どうやって奴らを攻略するかだが、マクレイ」
「あいよ!」
マクレイがゴソゴソと棚からなにかを持ってきた。
「頼まれていたジャミング装置だよぃ」
テーブルの上に小さなサイコロの様な装置が置かれる。
「ほぉ、思っていたよりも随分と小さいな」
「戦闘中に使う事が前提だからねぃ、手榴弾だと思ってくれればいいよぃ」
「スイッチを押して投げつけると周辺に強力な妨害電波を発生させる」
「それほど範囲は広くないから、離れて投げつければいいよぃ」
「ふむ、使い方は簡単だな」
バロウは装置を手に取りまじまじと眺めている。
「ただし、過信は禁物だよぃ」
「一瞬ブースターをシャットダウン出来るが、最初から対策されたら意味がない」
「それに奴らが使っているシステムは最新鋭の物じゃからのぅ、直ぐに復旧できるはずじゃ」
「ほんの数秒ブースターを無効化できる程度じゃよ」
「なるほど、それは難しいな」
「前も話した通り、ゼンという男は感覚がおかしくなっているはずじゃ」
「十分に疲れさせてから使えばその分効果も大きくなるはずじゃよ」
「そうなるとゼンクルーク本人と戦うまでは温存しておいた方がいいか・・」
「それともう一つ」
マクレイがゴソゴソとまたなにかを取り出した、細い腕輪の様な装置が3つ机に置かれる。
「ブレスレット?可愛いね」
「腕に付けて手を前に出してパーにしてご覧」
首を傾げながら、マクレイに言われたとおりに手を突き出すリン。
すると、リンの体を守るように前方に小さなデジタルの壁ができた。
「バリア?凄いね!」
「簡単な物じゃが少しの飛び道具位なら防げるはずじゃ」
「手をパーにするのが起動の合図じゃから相手と距離が開いたら使うといい」
シュウとバロウも腕に装置をつけ、起動の仕方を確認する。
「盾が壊れたら、修復に少し電力を消費してチャージする必要がある」
「腕輪のランプが青色の時は、ちゃんと盾が使える合図だよぃ」
「ありがとうマクレイさん!やっぱり天才だね!」
目を輝かせてお礼を言うリンを、マクレイはニコニコと見守っていた。
「よし、これで準備は整ったな」
考え込んだ後、バロウはリンとシュウの顔をじっと見つめた。
「この作戦はお前たち2人にかかってる」
「切り札を温存しながらだ、厳しい戦いになるだろう」
「命に関わるような危険な作戦だ、それでも頼めるか?」
真剣な表情のバロウに対してリンとシュウはクスっと笑った。
「なーに言ってんのさ、最初からそのつもりでいるっての!」
「うん、もう覚悟は出来てる、迷う事もない、後はやるだけだよ」
2人は凛とした表情でバロウに返事をした。
「そうか、そうだな!」
「俺もすぐに追いつく、2人は思う存分暴れてくれ!」
「おうよ!」 「うん!」
爽やかな返事が部屋に響き渡った。
「決行は3日後、十分体を休めて準備を整えてくれ」
「では、当日にまた連絡する」
リズは話を終えると通信を切断した。
「一応、今日までに用意できた装置は2つじゃ、渡しておくよぃ」
「無理難題を間に合わせてくれてありがとな、大事に使わせてもらうぜ」
「あぁそれと、一応これもあげとくよぃ」
マクレイがそういってポケットにゴソゴソと手を入れる。
すると、中から小さな赤いお守りを取り出し、3人に一つずつ配った。
「なんだお守りか?珍しいな、アンタはこういうの信じないと思ってたが」
「可愛い!ありがとうマクレイさん!」
「へー、どこかに買いにいったのか?ありがとさん」
3人の反応を見て少し恥ずかしそうにするマクレイ。
「うぅ・・お前さん達はワシの大事な家族じゃ」
「息子か孫か、そんなのはわからんが、ワシはお前さん達が大好きじゃ」
「どうか・・どうか無事で帰ってきておくれ」
もじもじと話すマクレイ、3人は一瞬キョトンとしていたが、その真剣な言葉にニッコリとほほ笑んだ。
リンはゆっくりマクレイを抱きしめる。
「ありがとうマクレイおじさん、必ず帰ってくるからね」
「終わったら、また皆で飯に行こうぜ!」
「おう!どっかいい店探しといてくれよ!」
バロウとシュウも元気に答える。
「必ず、必ずじゃよ・・」
マクレイはリンの手を握り、心の篭った声で言った。
工場を出て車に乗り込む3人、車はゆっくりと走り出す。
3人は言葉はなかったものの、決意に満ち溢れた爽やかな表情をしていた。
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