第28話

 ――モニターの電源を切り、しばらくの沈黙が3人を覆う。


 するとそこに通信が入り、応答するとリズがこちらの様子を伺いながら現れた。


「やられたな、こんなに早く先手を打ってくるとは」


「あぁ、しかもここまで大胆にやりやがるなんてな」


「これで一般市民の不安を煽り、尚且つ自分たちは正義の味方だという演出も出来たわけだ」

「まだ法整備も間に合っていないといのに、完全に先手を取られたな」


「これからどうする?」


 深刻な表情で話すリズにバロウも険しい表情で話を続ける。


「今の三文芝居で、より一層ブースターが普及してしまうだろうな」

「クルークカンパニーにとっては自分達の駒を増やす絶好の手段だろう」

「一般人をジャンキーにしてしまえば、いくらでも手を加えられるからな」


「手を加えるって洗脳するって事ですか?」


 リンが不安そうにリズに尋ねる。


「その表現が一番正しいかもしれないな」

「ジャンキーならば、電脳を経由して幾らでも自分達に従わせる事ができるだろう」

「人間の脳にウイルスでも入れられた日には、目も当てられないな」


「そういう事態になっても、おかしくないって事か」


「あぁ、どこまで技術が進んでいるかは不明だが、準備は整ってきているという事だ」

「そうなる前に、叩き潰さないとな」


 シュウも表情を強張らせながら、リズの話を聞いていた。


「奴らを堂々と正面から潰すために、準備はしている」

「法整備の前に、ブースターの違法性を唱えて叩くつもりだ」


「警察は動けるのか?」


「動くさ、それが例え人々の反感を買ってもな」

「正しいかどうかなんて後から分かればいい事だ、一刻も早く奴らを止めなければ」


「そうだな、確かに周りの同意を得ている時間はない」


「圧力をかけてくる政治家や警察の重役もいる、正直、事が終わった後どうなるかはわからない」

「だがそれでも、危険を承知で私を信じて動いてくれる優秀な部下たちを集めている」

「状況が整い次第、宣戦布告するつもりさ」


 覚悟を決めたリズの表情をみて、バロウ達も気を引き締める。


「勿論、君達には最前線で戦ってもらう事になる」

「ブースターの押収をしつつ、準備を整えてほしい」


 顔の前で手を組みながら淡々と説明するリズ。


「取り敢えずはブースターの押収と、バグを製造している工場の特定か」


「そうだな、警察も探りを入れてはいるが証拠を押さえるには至っていない」

「だが、この前襲ってきた人形を作っている所さえ掴めれば、事態は大きく傾く」


「確かに、アイツらがやってることさえ暴いてしまえば、いくらでも突入する理由が出来るな」


 バロウとリズの会話を聞いて納得するシュウ。


「マクレイにも色々と開発して貰っている、すべての準備が整ったら反撃開始だ」

「危険な戦いになるが、君たちはついてきてくれるか?」


 リズの言葉に一瞬鎮まる3人だったが、直ぐに表情を和らげた。


「勿論!俺はいつでも準備万端だぜ!」


「私も覚悟は出来ています、もう迷うことはありません」


「二度とあるかもわからない大仕事だ!正々堂々ぶっ潰してやろうぜ!」


 シュウ、リン、バロウの3人は覚悟を決めたうえで爽やかな顔を見せた。


「そうか、それは心強いな」


 その顔を見て、リズは少しだけほほ笑んだ。


 大きく事態が動いたこの日、4人はお互いの覚悟を確かめ合い前へと進むのであった。

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