第24話

 ――帰り道の途中、綺麗な街並みが見える公園の自販機前に車を止めたバロウ。


 缶コーヒーを買い、街を見ながら蓋を開ける。


 考え事をしながらコーヒーを口にしていると、一台のバイクが停車し、乗っていた男性がこちらに歩いてくる。


「ようバロウ、警官辞めたのにまだここで休んでるのか?」


「なんだユリスか、随分久しぶりじゃねぇか」


 ユリスはリズと同じ、バロウの元同僚の警官である。


「お前こそ、現役警官のくせにこんなところで休んでていいのか?」


「いーんだよ俺はリズと違って平なんだから、な?」


「後でどうなってもしらねぇぞ、全く」


 ユリスはどこか気の抜けたような男だが、人望が厚く、バロウやリズと様々な事件を解決してきた。


 バロウと並んでコーヒーを飲むユリス。


「なんか悩み事か?」


「まぁな、といっても俺の問題じゃない」

「そいつ自身が考えなきゃいけない事だが、親代わりとして何か力になれないかと思ってな」


「親代わり・・引き取った子の問題か」


 バロウの顔をみて何かを察したユリス。


 遠くを眺めながら、コーヒーを片手に一息つく2人。


「難しいよな人生は」


「なんだよ急に」


 突然口を開いたユリスにバロウはきょとんとしていた。


「次から次へと無理難題がやってくる」

「親だろうが子供だろうが、悩みが尽きることはないだろ?」


「まぁな」


「結局は、自分がどうしたいか、何を信じるかって話だ」

「親にできるのは、精々正しい方向に進むように祈る位のもんさ」


「そうだな」


 返事をしながら俯くバロウにユリスはにっこり笑いかける。


「だからよ、せめてお前は自分の信じる正しい道をいけ」

「子供は何時だってお前の背中を見てる、お前が間違ったり曲がったりしたら子供も同じになる」


「・・・・」


「警察辞めたのだって、自分の正しいと思う道に進むためだったろ?」

「お前がちゃんと正しく真っすぐいれば、子供もきっとそれに答えてくれるさ」


「そうか・・そうだな」

「俺が、ちゃんとあいつらの前を進まないとな」


 飲み終わったコーヒーの缶をゴミ箱に入れると、バロウはすっきりした表情で姿勢を正した。


「ありがとな、なんか肩の力が抜けたよ」


「ははっそりゃよかった、今度また飲みに行こうぜ!」


「あぁ、また連絡するよ。じゃぁな」


 バロウはユリスに軽く手を上げると、車に乗り込んで拠点へと向かった。


 ***


 ――バロウが拠点に戻ると、シュウが携帯をいじりながらソファーに寝っ転がっていた。


「リンはまだ部屋に篭ったままか?」


「いや、ちょくちょく出てきてたぜ?」


 シュウが返事をしていると、奥の部屋からリンが出てきた。


「あ、お帰りバロウ」


「ただいま、調子はどうだ?少しは落ち着いたか?」


「その事について話そうと思って」


 リンが中央のテーブルの前に座ると、シュウも起き上がり耳を傾ける。


「お父さんが生きているなんて思わなかった、また会うなんて絶対にない事だと思ってた」

「だから色々と考えた、頭の中ぐちゃぐちゃだったけど」


「そうか、大変だったよな・・」


「うん、でもね、どれだけ考えてもやっぱり答えは一つだったよ」


 表情を曇らせていたバロウとシュウ、リンは深呼吸して話を続ける。


「色々と思うことはあるけれど、一つはっきりしているのはお父さんがやっているのは悪い事だって事」

「それは私達が今まで取り締まってきた事、絶対に許されない事」


 改めて息を整えるリン。


「だから、私は今まで通り戦うよ」

「自分の父親だから、なおさら止めなきゃいけない」

「間違った事をしているなら、私の手で正したい」


 その言葉を聞き、バロウはゆっくりとリンに近づいて抱きかかえる。


「そうか、よく決断したな」

「お前の覚悟は良く分かった、一緒に戦おう」

「いつでも頼ってくれ、俺はどんな時でもお前の味方だ」


「うん、ありがとう」


 バロウの腕の中で、リンはそっと目を閉じた。


「うし、じゃぁ俺も覚悟を決めるか」

「あいつらの目を覚まさせてやろう、俺たち3人でな!」


 シュウは歩み寄るとニコッと2人に声をかけ、肩を軽く叩いた。


「俺たちは、俺たちの信じる道を行こう」


 これから迎える大きな戦いを前に、3人はお互いの顔を見ながら決意を新たにした。

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