第21話

 ――ビルの陰から夕陽が差し込む工場の前には、大量のヒューマノイドとデジタルの人形がずらりと並んでいる。


 そしてその中心に立ちこちらをにやけながら見る男、ジョーカーがそこに立っていた。


「クヒヒッ!待ってたぜぇリン!」


「・・・・ジョーカー」


 一気に表情が強張る3人をよそに、ジョーカーはケタケタと笑う。


「妙な点検が入ったって言うからよぉ来てみて大正解じゃねぇか!」

「俺は昔から勘がいいんだよ・・クヒヒッ!」


「そうかい、そりゃぁ残念だな」


 クッとジョーカーを睨みグローブを構えるバロウ、シュウとリンも武器を手に取り体制を整えグラスを起動する。


「どうする?かなりの数だぜ」


「各個撃破するしかないだろう、あの男をどうするかだが・・」


「――私が闘うよ」


 リンの顔を見るバロウ。


「いけるのか?」


「大丈夫、今度は必ず止める」


「おっしゃ!じゃぁ他は俺達に任せな!おめぇはあいつぶっ飛ばしてこい!」


 リンの顔を見ながら、シュウは大きな声をかけ背中を軽く叩く。


 それを見ていたジョーカーも嬉しそうに声を上げる。


「クヒヒ!おいてめぇら!あの女は俺のだ、てぇだすんじゃねぇ!」

「ほかの野郎をぶっ殺せ!」


 その声を皮切りに、ヒューマノイドと人形が一斉に動き出す。


 バロウとシュウが左右に分かれた所をリンは真っすぐに走り出し、ジョーカーに一気に踏み込む。


 リンの思い切り踏み込んだ一撃をジョーカーは以前と同じ黒いデジタルの物質を剣の形状に変え受け止める。


「さぁ!楽しもうぜ!」


「――ハッ!」


 息をつく間もない激しい剣戟が繰り広げられる。


 リンは以前よりさらに集中力が増しており、ジョーカーの攻撃にも一切動じず的確に剣をさばいていた。


「ヒヒヒッ、前より強くなってんじゃねぇか?」

「いいねぇ!そうでなくちゃ殺し合いは楽しくねぇよなぁ!」


 ガキン!っと刀を弾きリンは少し後ろに距離を取る。


「ソラァ!」


 ジョーカーの球体が棘になりリンに襲い掛かるが、リンは冷静に身を躱し再び距離を詰め切りかかる。


(恐ろしい攻撃だけど、一度見た分対処はできる)

(前回のようにはいかない、私が止めるんだ!)


「クヒハハハハァ!!」


 ジョーカーはリンの気合に呼応するように君の悪い雄たけびを上げていた。


 一方、シュウとバロウは次々に襲い掛かるデジタル人形とヒューマノイドを打ち砕いていた。


「やっぱしヒューマノイドでも攻撃は大したことねぇな!」


「単純な動きしかできてないからな、完璧な兵士にするのは難しい課題なんだろ」


 シュウに返事をしながらバロウの拳がまた1つ人形を砕く。


「お前、この前リンと病院で何か話をしたんだろ?」


「ん?あぁちょっとな、なに、あいつはもう大丈夫だよ」

「迷いは吹っ切れてる、ただ真っすぐ相手に向かうだけさ」

「あいつは強い、何も心配いらねぇ!」


「フ・・そうか、じゃぁ俺達もいいとこ見せないとな!」


 シュウの返事を聞いてバロウは勢いよく声をかけた。


 2人は背中を向かい合わせながら、機械たちを捌いていく。

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