浮かび上がる巨大な影

第14話

 ――爽快な天気の下、病院の一室にて食事中のリン。


 そこに携帯の音楽が軽快に響く、枕元から携帯を手繰り寄せ机の上に乗せて応答する。


 コーヒーを飲みながらこちらを見るバロウが映し出される。


「ようリン、なんだ食事中だったか?悪いな」


「大丈夫だよ・・・・モグモグ」


「体調はどうだ?痛みは取れたか?」


「まだ少し疼くかな、でも平気」

「先生は後一週間位様子見たら退院できるって言ってた」


「そうか、そりゃよかった。まだ10日しか経ってねーんだ、現代技術に感謝だな」


「うん、それにしてもここのご飯、凄く美味しい」

「病院とはいえ、侮れない・・ムグムグ」


 一口一口なにか頷くように食べ続けるリン。


「お、なんだ元気そうじゃん」


「傷は塞がったからね、元気だよ」


 リンの表情を伺いながら、映像にシュウが映り込む。


「今日はこの間尋問した情報を整理して今後の予定を立てようと思ってな」

「リズは忙しくて今はこれんらしい、取り敢えず俺達で状況を確認しよう」


 バロウが通信機のボタンを押すと、一枚の絵が画面に現れる。


「クルークカンパニー?会社のロゴ?」


「あぁ、この間シュウと一緒に尋問したルイスって男が吐いた」

「ここがブースターの製造元らしい、ジョーカーもここの使いとして来ていたみたいだ」


「見たことあるロゴだけど、なんだっけ?テレビでやってた気がする」


 もぞもぞと食事を終え、首を傾げながら考えるリン。


「元々は警備会社だ、警備用のヒューマノイドやセキュリティ機械を作ってる会社だな」

「社長の名前はゼン・クルーク、年齢は67歳」

「今や世界中のセキュリティシステムを担っているといっても過言ではない企業だ」


「ゼン・・・・」


「どうかしたか?」


「――ううん、なんでもない」


 何かを考え込むリンの表情を不思議そうに見るバロウ。


「なにが目的かはわかんねーけど、なにせ規模がでけー会社だよな」


「あぁ、その企業すべてが相手となると相当な覚悟は必要だな」


 シュウとバロウは考えながら息をのむ。


「まずはブースターの違法性を早く認めさせて、いつでも取り押さえられるようにするとこからだ」

「そこはリズ頼みだが、俺達はブースターの押収をしつつ製造している現場を見つけないとな」


「とりあえず今はこんなところだ、リズには同じ話をしてあるがまた改めて全員で話をしよう」

「ま、お前は今は治療に専念してくれ、3人揃わないと始まらないからな」


「うん、わかった」

「あ、そうだそういえば・・・・」


 リンが棚から武器を取り出す、よく見ると柄の部分にひびが入っている。


「この前戦った時ヒビが入っちゃったんだよね、マクレイさん直せるかな?」


「ふーむ、折角だし全員の武器をメンテナンスしてもらうか」

「俺から爺さんとこに連絡しとこう」


「よし、また何かあったら連絡する」

「退院の日程が決まったら教えてくれ」


「わかった、またね」


 軽く手を振るリン、バロウも少し手を上げてそれに答え通話は終了した。



 バロウが通話を終えマクレイに連絡を取ろうとしていると、シュウが立ち上がり拠点を出ようとしている。


「どこかいくのか?」


「あぁ、久しぶりに孤児院にいってくる」

「最近チビ達に合ってなかったからな、たまには顔ださねーと」


「フフッそうか、気を付けて行けよ」


「おう、なんかあったら連絡くれ」


 シュウは拠点を出て、バイクに乗り込んだ。

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