失う物すらないこの世界で

第9話

 ――人通りの少ない寂れた場所、そこには小さな工場があった。


「ようマクレイ、元気でやってるかい?」


「お久しぶりです、マクレイおじさん」


「うぃーっす」


 バロウ、リン、シュウの3人が中に入って声をかけると、ぼさぼさ頭に薄汚れた服を着た老人がむくっと出てきた。


「やぁ随分久しぶりじゃないかお前たち、ワシは相変わらずだよぃ」


「たまには顔を見せてくれないと寂しいぞぃ?」


 そう答える老人の名はマクレイ、3人の武器や機材を開発したエンジニアである。


 要望に応え多種多様な物を開発する凄腕だが、危険すぎる物も度々作ってしまうためリズには要注意人物として見られている。


「元気じゃなきゃマクレイおじさんじゃないよね」


「お前さんは相変わらず可愛い奴じゃねぇ」


 ニッコリ話しかけるリンを見てマクレイも口角が緩む。


「リズからの依頼は終わってるか?受け取れるなら持っていきたいんだが」


「お~ぅ出来てるぞぃ、待っとれ待っとれ」


 バロウの問いに答えると、ごそごそと何かを取り出すマクレイ。


「この装置で携帯にデータを取り込んどくれ、こっちはレーダー機材ようじゃよ」

「取り込みが完了すれば起動できる、アプリだと思ってくれればよいよい」


 マクレイの説明を聞き、各々自分の携帯にデータを取り込む。


 取り込みが終わると、携帯から小さなレーダーが映し出される。


「すごい!これ携帯で使えるんだ」


「おー便利だな、ちと小さいけど」


 リンとシュウの反応を見て、マクレイは楽しんでいる様子。


「範囲は少々狭いがね、今までのレーダーと同じ物だと思ってくれて構わんよ、勿論ブースターも映るぞぃ」

「わざわざレーダー本体から情報を送る必要もない、どうじゃ?いいじゃろ?」


 3人に楽しそうに説明するマクレイ。


「これは便利だな、レーダー本体も取り込むだけでいいのか?」


「あぁ問題ないぞぃ」


 新しいレーダーの性能にバロウも嬉しそうにしている。


「たーだーし」

「ブースターは映る事には映るが、あくまでも電源が入っている場合だけじゃ」

「起動している時の電力を嗅ぎつけるようになっとる、電源が入っていなければ映らんから中止しろやぃ」


 3人に注意を促すマクレイ


「なるほど、確かに全部を炙り出すのは難しいか」

「まぁでも十分だろう、未然に事件を防げる可能性はいくらでもある」


 バロウの言葉に、リンとシュウも納得の様子。


「ありがたく使わせて貰うよ、今日もこれから仕事に行くところだ」


「なんじゃい、またブースターが見つかったかぃ?」


「あぁまだ所持している人間がいる可能性が高い、今日はそこを調べに行く」


「そうかい、まーあんまり無理な仕事はするなよー?若いっていっても、体が資本だよぃ?」


「そうだな、気を付ける。あんたもあんまりリズを困らせるようなものは作るなよ?」


「リズちゃんはちょっと厳しすぎるからのぅ、もうちょっと心を広く見れんもんかの?」


 バロウとマクレイの会話を聞いて、リンもクスクス笑っている。


「じゃ、またねマクレイさん」


 ニコッとリンはマクレイに挨拶し、3人は工場を出て車に乗り込んだ。

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