第2話

 博物館と美術館を合わせたような大きな建物に到着したリン。


 歴史的な物品、名作の絵画、これらはすべて大昔この世界で生まれたものだ。


 ――リンがじっと展示物を眺めている、視線の先には一本の日本刀があった。


「やっぱり、キレイ」


 この施設の管理人のをしている男性が近寄ってくる


「お、久しぶりだねリンちゃん」


「お久しぶりですおじさん、お変わりないですか?」


 軽く会釈をするリン


「あぁ相変わらずだよ、しかし君も物好きだねーぃ」


 男性は呆れたような顔で喋りかける


「そうですかね?」


 リンは意外なことを言われたような顔をしている。


「そりゃぁそうさ、いくらこの刀が綺麗だっつってもさ?今この時代じゃぁこれが本物かどうかも怪しいだろ?」


 男性は周りを見回しながら話をつづける。


「どれも名作だ、それは間違いない、ただ今の時代どんなものでも99.99%完璧に近いほど同じコピーの物が作れちまう」

「どれだけ名作でオリジナルだろうが、こんだけ時が流れてしまったらいつどこで完璧なコピーとすり替わったかもわかんないだろう?」

「今となってはこれが本当に名匠の作ったオリジナルなのかなんて、誰にもわからねぇって話だ」


「――でも、私は好きだよ」


 少しの沈黙の後、優しい表情を浮かべながらリンは答えた。


 男性は首を傾げている。


「なんていうか、この刀は作った人の――魂?みたいなものを感じるから」


「そうか、魂ねぇ・・・・」


 男性は刀を改めてまじまじと眺める


「ま、やっぱり君が物好きだってことは間違いないな!」


 リンは少し不満げな顔で、小さなため息をついた。


 そんな会話をしていると、なにやら楽し気な音楽が腕につけた装置から聞こえてくる。


 リンは腕時計ほどの大きさの携帯を見つめ応答ボタンを押す、すると携帯から映像が飛び出しバロウが話しかけてきた。


「おう急に悪いな、バグの反応があった、そこから200mくらい先の工事現場だ」

「シュウもいまそっちに向かってる、人はいねぇみたいだから、さっさと片付けてくれ」


「ふぅ・・わかった、すぐ行くよ」


 少し息を吐き、携帯を切るリン。


「またね、おじさん」


 そういうと、管理人に軽く手を振った。


「お仕事かい、頑張んな!ここはいつでもやってるから」

 

 男性はにっこりとほほ笑んだ。


 バロウから送られたマップデータを携帯で確認しながら駆け足で現場に向かうリン、人通りはさほどなく静かな建物達を抜けた先に建設工事途中のビルが見える。


「ようリン、早かったじゃんか」


 先に現場に到着したシュウがバイクに腰掛けてこちらに手を挙げた。


 あたりを見回すと、重機の上や鉄骨置き場、合計4つほどもやもやした空間がみえていた。


「――結構いるね」


 リンはグラスをかけ武器を構えた、青白い電気の刃が現れる。


「ちゃちゃっと終わらせますかねー!」

 

 そういうと、シュウもグラスをかけ腰から柄だけの棒状の物を取り出し構える、すると、柄の両側から槍の様な形状の電気の刃が飛び出た。


「いくよ・・!」

 

 リンとシュウは武器を手に走り出す。


 ゴリラの様なバグ達がうなり声をあげながら2人に向かって襲い掛かる。


 リンがキレイに攻撃を受け流しながらバグの体を切っていく。

 シュウはまるで踊っているかのような動きで、次々に攻撃を当てていた。


「後ろ、来てるよ」


 リンが視線を送る。 


「分かってーるっての!」


 シュウが振り向きながらバグを切り裂く。


 2人は5分にも満たない時間で、あっという間に4体のバグを葬った。


「こんなもんかねー、他はいなさそうだしな」


 シュウはちょっと退屈そうな顔で武器をしまう。


「もしもし?終わったよ。数は多かったけど、別に物も壊れてないし、まだ被害が出る前だったみたい」 


 リンは携帯が映し出すバロウに報告していた。


「そうか、ごくろーさん。」

「晩飯はどうする?帰る時になにか好きな物買ってこいや、俺はカレーな」


 バロウがにやけながら提案する。


「うーむ俺は、ラーメンか・・・?いやハンバーガー・・・」


 シュウが妙に真剣な顔でブツブツ言い始めた。


「はぁ・・なんでもいいよ、いこ」

 リンはそういうとシュウのバイクの後ろに座り込んだ。


 シュウが運転席に座りバイクが走り出す。


 後ろに座りながら遠くを眺めるリン、そこには幻想的で美しい巨大な街並みの夕暮れが見える。


 遠い未来で、今も変わらない夕陽に照らされ、非日常の様な日常が、ゆっくりと過ぎ去っていく。

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