24話 表れた道標

 渡されたのは、洞窟の壁の一部分の拡大写真。

 これには小さな、それこそ小指の爪ほどの大きさのがある。さらに拡大された写真を見てみると、それは小さな円の図面だった。

 円の中心から放射線が伸びて、図面が25等分されている。それと、円の上部に描かれた「椅子に座る剣を持った男」と、分けられたパーツに書かれた「名前」

 昔の筆記体で読めないけれど、これだけ「証拠」が集まっていれば、私でもこの円が指し示すものはわかる。


「これは『円卓』だわ! アーサー王を守る忠実な騎士たち、名前は彼らのものね」

「そうとも。パーシヴァルにトリスタン、ガウェインにランスロットといった、24人の騎士の名が刻まれているんだ」


 「ほら」と言いながら、ハワードは私に名前を指し示す。それでも読みにくいけれど、よく目を凝らせばTやAが見えるような気がした。

 でもこの図面、昨日見た時はなかったはずよね? どうやってわかったのかしら? 脳裏に浮かんだ疑問をハワードに聞くと、彼は不敵な笑みを浮かべて答える。 


「ノエに頼んでおいたのさ。解析において、彼ほど優秀な人物はいないだろう?」

「流石だわ。貴方の無茶ぶりにも答えるなんてね。あまり無理していないといいのだけれど……」

「……君も人のことを言えないけどね」


 ハワードが何か言ったような気がするけど、朝の混雑のせいか、雑音にかき消されて何も聞こえなかった。

 まるで私に聞き返されたくないように、ハワードは続きを足早に話始める。


「彼曰く、『レーザーかなにかで削り取った』みたいだ。高温で肉眼では見えないほど、小さな図面を描く能力も、ガラス玉には備わっていたみたいだね」

「レーザー……?」


 それを聞いて思い出す。そういえば、映像が映し出された時、がしたことを。

 あの音は壁面を光のレーザーで削り、図面を描いている時のものだったのね! 


「じゃあ、今度は『円卓の騎士に由来する場所』に行くの? そんなの無限にあるんじゃない?」

「いいや、行く場所は一つしかないよ。『壁面に描かれた円卓』がある場所に行く」


「今度行くのはウィンチェスター城、グレートホールさ」


 ハワードがかざしてきたスマホには、とある場所が映し出されている。

 教会のようなその場所は、図面と全く同じの巨大な円卓が、壁面に飾られていた。 

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