<エピローグ 塩の柱>

 神々の遺物とされる巨大な天秤で、その名を知られた、港町ヴィスィエー。

 かつていちど滅んだその町は、長い歳月のあと、人族と獣人族が共存する平和な町としてよみがえり、栄えている。

 海からも、町からも、黒光りしてそびえたつ、見上げるばかりの神の天秤が見える。

 天秤は、海から見れば右、陸から見れば左に大きく傾いている。

 以前は、これが逆であったのだが、一夜にしてその傾きがこのように変わったのだという。


 それが何を意味するのか。

 いつかまた天秤の傾きは変わるのか。

 だれも知らない。


 生まれかわり、よみがえった町の中央広場に並んで建つ、二人の女性の像。

 ひとりは獣人で、ひとりは人族だ。

 それは、いちど滅んだ町を復興させるために力を尽くした、偉大な二人の女性市長、イリーナとフィアルキの像である。

 像はお互いに視線を向けて、微笑んでいる。


 中央広場の外れには、風化した塩の柱が一つ建っている。

 よく見ると、祈りをささげている人のようにも見える。

 この柱の由来はわからない。



「混沌の邪神のしもべ2 天秤の都市」完

「混沌の邪神のしもべ3 祭壇の少年」に続く

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混沌の邪神のしもべ2 天秤の都市 かつエッグ @kats-egg

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