第61話 ねぇ、俺の分は?
「……いかんな」
ダンスは無事に終わったが、後半、フェルデンを見つめすぎた。
だが、まぁ、届いているといい、俺の気持ち。
「豆せんぱーい。後半さー、お姉ちゃんにあっつーい視線を送っていたよねー?」
肘で突いてくるヲタ兄。
まぁ事実だが、やめれ、そのニヤニヤ顔。
「確かに。茹で豆になっていいのは、豆先輩だけだ。姉さんを茹でさせないでいただきたい」
クールな顔してるが、目が笑っているぞヲタ弟。そして、お前もやめれ肘ツン。あと、茹で豆って何?
「ま、お姉ちゃんは気づいてないと思うけどねー」
「……んな事は、わかってんだよ」
ただどっかの誰かさんのせいで、盛り上がっていた体育祭を。悲しい思い出にさせたくなかった。
「見事な歌声と、キモいダンスでしたー。さて次はお昼休憩です。皆さん、お寛ぎください」
実行委員のアナウンス係、失礼だな。キモくて悪かったな。
ま、ダンスして腹が減っていたから丁度よかった。
「おねーちゃんっ、ランチはどうするのー?」
いつの間にフェルデンのとこに行った、ヲタ兄。
「お弁当を作ってきました」
「いいなー」
「ヴィエルさんたちの分もありますよ」
「本当!? わーい!」
こういう時に、あざと可愛いを全開に出しやがって。
「“たち”、ということは、僕の分もあるんですか? 姉さん」
「もちろんですよ」
「——このまま死んでもいい」
恍惚な表情のヲタ弟。
「…………」
だから! どうぞ! 今すぐにでも!
「リールたーん、アタシの分はー?」
バッサバッサヤンデレ。
「もちろん、ありますよ」
「ギィヤー!」
上空から鼻血と涎を撒き散らさないでください。
「まさか、あたしの分はないよな?」
「
「優しいなー、リールはー」
「…………」
俺の分は?
「えー、リュゼたちもお昼代浮かしたいからー、食べてあげてもいいけどー?」
どこから来た、双子天使。
「はい、いっぱい作りすぎたので、すいませんが食べてくださると助かります」
「し、仕方ないなー」
「…………」
ねぇ、俺の分は?
「オレの分も、もちろん、あるよねー?」
「え……」
出たな! 来ると思ったぜミーヤドス!
折角イケメンズ+αが和ませてくれた空気が、一気にどんよりしたじゃねーか!
何か、何かないか! こいつを連れ出す口実は!
……あ! そうだ!
「丁度いい時に来たな
「え? そこにある自販機でそれぞれ買えばいいじゃん」
「…………」
わぁーかぁーれぇー! お前をここから離したいことをー!
「あー、ボクー、体育館近くにある自販機にしかない炭酸が飲みたいなー」
ナイスアシストヲタ兄!
「だってさ! あいつ怒らすと怖ぇから、買いに行こう! な! な!?」
「えー、仕方ないなー」
見谷の背中を押しつつ、振り返りヲタ兄にグッジョブサイン。それを見たヲタ兄はウインクした。かっこいいウインクあざーす、と思いながら、体育館に向かった。
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