第57話 安定の可愛さ!
さて、バケゴリのおかげで丸くなった雰囲気。このまま次の種目で活躍して、「雅さん素敵です!」を! もらうのだー!
どーだ!? 次の種目はー!?
「プログラム四番、綱引きです。出場する生徒はグラウンド中央までお集まりください」
「……オワタ」
綱引き。一見すると、筋肉の俺の出番に見える。だがしかぁし! ウチのクラスにはバケゴリがいる。俺の見せ場は、ない。
「頑張りましょうねっ、雅さんっ」
ガッツポーズフェルデンが、カムバックした。
「……お前も出るのか?」
「はいっ、走るのは苦手なのでっ、それ意外はなるべく参加しようと思っていますっ」
「……うん、ならもう、いいや」
フェルデンと一緒に種目出れんなら、もう、何でもいいや。
「何がいいんですか?」
「いや、綱引き頑張ろうなって話」
「はいっ、頑張りましょうっ」
こうして、グラウンド中央にやってきた。
「よーし! 腕が鳴るなー!」
実際にバキボキと鳴らしながら、腕を回すバケゴリ。
そんなバケゴリが最後尾、先頭集団は俺を含む力がありそうな男子、間に女子。ササッちながら、いい配置だと思う。
「リールはただ綱を持ってればいいから」
「いえっ、私もちゃんと引っ張りますっ」
今日も真面目だフェルデン。後ろから聞こえるバケゴリとフェルデンのやり取りに、心を和まし前を向くと。
「…………」
怖いですね。ガンつけられてます、ヤンデレに。その顔だけでわかりました「何で先頭はリールたんじゃなく豆なんだと」言いたいのが。
それはですね、勝つためですよ。ヤンデレさん。だからこの配置なんですよ。俺を睨んでもリールたんは前に来ませんから。
「それでは皆さん、綱を持ってください」
実行委員のアナウンスと共に、全員が綱を持ち上げた。
「用意」
パーン! というピストル音と共に、綱を引く両軍!
「オーエス! オーエス!」
掛け声が古いな! 小学生か! と、思いつつ。
「オーエス!」
俺もオーエス。
「オーエス!」
後ろから、聖母オーエス。パワーアップ!
「オー! エりゃー!」
「紫軍がリードしています! 対する紅軍、負けずに踏ん張っています!」
「リールたんを寄越せやー!」
いやいや! フェルデンを引っ張る競技じゃねーから! でも、フェルデン愛が強いせいか、綱はまた戻される。
だが、負けるわけにゃいかねーんだ。
どっかのダークな人のせいで、薄まってきた楽しい思い出を、上書きしてやるんだ。
「筋肉豆をー! 舐めるなー!」
「紫軍、すごい力です! すごい力で綱を引いてます!」
どんどんこちら側に引っ張っていき。
ピピー!
「そこまで! 紫軍の勝利です!」
実行委員のホイッスルと共に、勝利で終わった。
紅軍が先に綱を離し、その勢いで。
「キャッ」
誰かが
振り向くと、ベタな漫画の、パンを咥えて走ったら、男子とぶつかって尻もちついちゃった、みたいな、尻もちをついたフェルデン。
「…………」
安定の可愛さ!
だが、スカートじゃないのが惜しい!
「おい、豆。今、リールたんがスカートじゃないのが惜しいとか思ったろ?」
後ろから、怒気を含んだヤンデレボイス。
振り向いてはならぬ、振り向いては。
「あっ! 次はダンスの時間だ! 俺は行かねーと!」
ダッシュで逃げた。丁度いい理由があってよかった。が、そう、次はとうとう、男子のパフォーマンス、『愛ダンス』だ……。
−−−−−−
あとがき。
そう、『愛ダンス』ですよー! 上手く書けるかなー(泣)
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