第56話 この目で見たものしか信じねぇ

 クラスの待機場まで戻ってきた。そして、すぐにグラウンドに座りスマホを構っていた見谷みやの所に行った。もちろん、エアーソードを持って。


「ミーヤドスよ」


「え、オレ見谷だけど」


「いーや、お前はついさっき、悪の黒幕ミーヤドスとなった。スグトラルの天敵だ」


「スグトラルって何」


「伝説の剣士だ。ちなみに花言葉しか斬れん」


「よっわ! ダッサ!」


「弱くて構わん、ダサくて構わん。フェルデンが笑ってくれるなら、俺は何度でも厨二病を発動する」


「……オレが言ったことが嘘だって言うの?」


「いや。お前が言ったことは事実なんだろう。それでも、俺は、あいつを信じる。好きでお前の親友を殺したんじゃないって」


「……殺されても知らないよ」


「死なんさ。俺は豆星からやってきた伝説の剣士だから!」


 エアーソードを天に掲げた。


「何が伝説の剣士だ。ただの助平だろ」


 バケゴリが立ち上がり、俺を見下ろした。


「そうだっ。赤町せきまちもあの子と仲良いよね、どう思う?」


 此奴こやつ、バケゴリを仲間に引き込む気か!? だがこいつはフェルデンを守り隊、副隊長だぞ!?


「リールが人殺しってか?」


 視力もいい、聴力だってばっちりだよ、バケゴリさん。


「そうそう」


「異種族わんさかな現代、人を殺してる奴なんかいっぱいいるだろ」


「…………」


 いや、いませんがな。日本を殺戮国さつりくこくにしないでおくんなまし。


「あたしなんか、鬼界きかいで向かってくる奴らバッタバッタ薙ぎ倒したし。閻魔に呼ばれて、死んだ後の奴らを裁いたりもしたぜ?」


「…………」


 閻魔に呼ばれる赤鬼、やっぱバケゴリだ……。


「オレが言いたいのはさ。人を殺しておいて、何のうのうと学校生活を楽しんでるのってこと。反省してないじゃん」


「反省してねぇわけねぇだろ? 天使より天使な頭のリールだぜ?」


 見谷も見谷だが、バケゴリもバケゴリだな。何を言われてもフェルデンを庇う、さすが副隊長だ。


「反省してるからこそ、ここを卒業したら魔界に帰るっつってんだ。あたしは、自分が殺してしまった奴らの分、学校生活を楽しみ、そして、懺悔ざんげしに来た。そういう心意気をリールから感じるな」


「……」


 男前だよバケゴリさん。

 そして、そうなんだよなー。バケゴリも聞いていた通り、フェルデンはここを卒業したら魔界に帰ってしまう。そして、家から出ない。


 最初で最後の、異種族交流高校生活なんだ。だから、あいつに会えたんだ。


 応援してやろうぜ。


「……二人はどこまでも可愛い子の味方なんだねー」


「そうじゃねぇさ」


 いつの間にか喚び出した金棒で、右肩を叩きながらバケゴリは見谷を見据えた。


「あたしは、この目で見たものしか信じねぇ。この目で見てきたリールは真面目で前向きないい奴だ。それが全てだ」


「…………」


 男前すぎだよ、バケゴリさん。そして。


「かっこいいとこ持っていかれたー! 俺がそれを言いたかったー!」


「はははっ! みやびには一億年早ぇ! 豆星に帰って出直してきな!」


 バケゴリに笑われたが、この豪快さのおかげでダーク感が和んだ気がする。


 よし、このまま次の種目も頑張るぜ!


−−−−−−


 あとがき。


 双子天使以外のイメージイラストできましたー。AI先生素晴らしい!

 たくさんあるので、お手数ですが、よければトップページからご覧ください↓

https://kakuyomu.jp/works/16816700427820675035


 あと、スピンオフ短編も書きました。よければー↓

https://kakuyomu.jp/works/16817330653944233081

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